『礼と節』を表現してみよう。 Part-12 4. 『礼節』として伝えられている作法-----【礼の仕方・座礼】

『礼節の作法』目次
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11.
礼の仕方
食事の仕方
座席の順序
ビジネスマナー
参列の仕方
しつけ
和室での礼儀
洋室での礼儀
同席の仕方
気配り
立てるという事
 

 『礼』と言っても、「座礼」「立礼」「敬礼」「会釈」「拝礼」「目礼」「黙礼」と、思いつくだけでもこれだけあります。しかし、作法に則った『礼』の仕方が常識と言える時代ではなくなりました。また、その作法も多岐に渡っていますので、どの方法が正しい作法とも言えなくなっています。
 ですから、少し作法を知って表現できるようになるだけで、チャンスを掴む事ができるかも知れません。

 武道を習い始めた時に、普通は『礼』の仕方を学びます。これも、その団体によって、必ずしも同じとは限りません。

 昭和50年前後だったと思いますが、私の恩師である、日本空手道致道会の故佐々木武先生が、小笠原流の『礼』の仕方に統一された記憶が残っています。
 小笠原流の座礼には、目礼(もくれい)から首礼(しゅれい)・指建礼(しけんれい)・爪甲礼(そうこうれい)・折手礼(せっしゅ礼)・拓手礼(たくしゅれい)・双手礼(そうしゅれい)・合手礼(がっしゅれい)・合掌礼(がっしょうれい)と9品目とされています。
 この品目のうち、佐々木武先生は、合手礼を採用し、日本空手道髓心会でもこの座礼を継承しています。
 しかし、今並べた9品目の『礼』(小笠原流ではお辞儀と呼んでいるようです)は、座して膝に置いた手を、両脇にに下し、指建礼から合手礼までが、その礼のレベルにより繋がっているので、一つづつのお辞儀の仕方がある分けではありません。相手により、場合により、目礼をする場合もあり、爪甲礼や拓手礼で、お辞儀をする場合があります。

 日本空手道髓心会で行っている座礼を例に、立っている状態から、正座して、お辞儀をするまでを言葉で説明します。

  立った状態から、正座をする順序です。 

1. 閉足(左右の足の親指から踵までを付けて立つ)で直立し、正面に視線をやり、両手は体側に指を伸ばして付ける。
2. 左足を後ろに引き、引いた足の膝を曲げて、膝を付く。この時膝の位置が前足の土踏まずの横に来るように、左足を引く。
3. この時左足の上足底を床につける。右足を左足の横まで引いて、左右の膝を床に付ける。踵にお尻を付けた状態を跪座(きざ)と言います。
4. 両足の甲を床に付け、両足の親指をつけて正座の姿勢をとる。
5. 正座の姿勢が取れると同時に、手の指先を内側に向くようにして、両足の付け根に置く。この時、肘を張らず脇を開けないよう、自然に下す。
6. 正座の膝は、拳二個分開く。
ここまでが、立っている状態から正座する場合の順序です。

  ここからが、座礼の順序です。  1. 両足の付け根に置いている両手を、静かに床に手の指先が付くように下ろしますが、この時同時に背筋を伸ばしたまま、前に倒します。
2. 手の指先が両膝の横に来た時に、両手の平を床に付けます。
3. 床に付いた両手を体の中心に寄せ、親指と人差し指を付けます。
4. この時に親指と人差し指で三角形を作ります。
5. 背筋を伸ばしたまま、低頭し、親指と人差し指で作った三角形の真上に鼻先が来るようにします。頭を床に付ける必要はありません。
★ 鼻先が親指と人差し指で作った三角形を超えると、平伏となります。平伏は、ひれふすことになりますから、『礼』とは言えません。頭を床に付けるのも同じ意味です。
  ここからは、正座の状態から、直立する方法です。  1. 片足ずつ上足底を床に付け(両足は殆ど同時)、跪座(きざ)の状態を作ります。この時両手は足の付け根のままです。
2. 跪座(きざ)の態勢から、左足の膝の横に、右足を前に出しながら立ち上がり、左足を前に進めて、閉足立になります。
3. 直立すると同時に、足の付け根に置いた手を、体側に下します。
3. この間視線は、顔の位置の正面を見ます。
【小笠原流では、立った状態から座る場合、女性は半歩片足を前に出すように教えているようです。道場では、男女とも上に書いた状態で動作を行います。】
 先述しましたが、空手道・柔道・剣道などの武道、あるいは、茶道・華道などにおいても、それぞれ作法の仕方はあります。特に武道の中には、座礼をする時に、拳を床に付けてする方も時々見る事が出来ます。これは、「爪甲礼」といい小笠原流で言う、9品目の中にあります。この『礼法』は、武道や茶道でも見る事ができます。(右側写真が爪甲礼)
 それぞれの仕方に意味があるようですが、私は上に書いた『お辞儀』の「作法」で『礼』を表す事にしています。

 忘れてならないのは、相手に敬意を表すための作法ですから、他の仕方も受け入れる気持ちを忘れてはいけません。自分のやり方に固執する問題ではありません。あくまでも、相手を思いやるための表現と言う事を忘れないようにしたいものです。

 もう一つ忘れてはならないのは、『礼』を表現する時の、視線です。この事については、次回の「立礼」で考えて見たいと思います。