『礼と節』の表現と言っても、多種多様です。今回は、言動の内、話し方について、考えて見たいと思います。
個人的には、この話し方が一番、癇に障ります。もう少し、荒っぽい言い方をしますと、「カチン」ときます。今で言う、切れるところまでは、行かないですが、頭に来ます。「無礼者」と思います。そんな人とは一緒に仕事をしたくありません。できれば、同じ空気を吸いたくもありません。と、ここまで言うと、言い過ぎですね。
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どんな話し方かと言いますと、返事の仕方です。返事は「ハイ」と習った筈ですが、「うん」と言う人がいます。子供ではありません。いい大人の返事の仕方とは思えません。
ところが、そこら中にゴロゴロいます。そんな返事を平気で使う人が。
まだ、会社勤めをしている時の事です。大阪市のごみ収集車が、私が在籍していた会社の所有する寮の、ごみ置き場の扉を、引っ掛けて曲げてしまったと、大阪市の職員から電話がありました。お詫びの電話です。
電話の主は、状況を事細かく説明しました。ここまでは、素直に聞いていました。そしてそれを受け、対処の方法をこちらから尋ねた時、すべて返事が「うん」です。一瞬錯覚しました。この人は、クレームを付けているのかと。しかし、どうも違うようです。やっぱり、扉を壊してしまって、謝るために電話して来たらしいのです。
私の常識では、こちらに非があり謝る時は、平身低頭、衣を正して、返事は「ハイ」です。決してぶっきらぼうに「うん」とは、口が裂けても言えません。まして、電話で済まそうとは思いません。僅かな物でも持参して、頭を下げて謝罪するのが、私が考える礼儀ある謝罪の方法です。
いつもその会社に来ている、営業マンも同じです。すくなくとも、相手から見ると顧客である会社です。そしてその役員である私と話をしていて、いつも返事が「うん」なんです。とても良い人にはみえるのですが、非礼な人と思いました。そんな人は、いつかぼろがでます。面従腹背の人だという事が、後に暴露されました。自分では気づかないのでしょう。
違う会社ですが、私も営業をしていた事があります。その時は、お客様の役に立つためには、何をすれば良いかを考えていました。しかし、その人は、自分が困っているから、今月これだけ売り上げが必要だと、要求ばかり主張していました。これでは、営業マンとしてだけではなく、生き方が、ちょっと違うかな、と思います。まして、返事くらい、大人の返事をしてもらいたいものです。
家に居ると、ときどき、セールスの電話があります。この時も「うん」と言う人が結構います。教える人がいないのでしょうか。それとも、「うん」と返事されて、私のように癇に障る人が居なくなったのでしょうか。
先日もテレビを観ていて、誰が見ていても「睨みつける」態度であった状況を見て、「そうですか? 私にはそう見えませんでした」と言ったコメンテーターが居ました。その時は、MCもびっくりしていましたし、他の出演者も「えっ」と、その言葉に驚いていました。誰が見ても、という言葉を訂正する必要がありそうです。
しかし、それが許される時代なんですね。表現の自由は、そんなものではないと思います。
これも、ニュースか何か覚えていませんが、アンケートに答えた人の中に、「ヘイトスピーチ」を規制すれば「言論の自由が奪われる」と言った人がいました。頭の中が、疑問符だらけになりました。憎悪表現がhate speechならば、憲法に言われている、公序良俗に違反している事は明白です。これを、さも何でも自由であるかのような、錯覚に陥っている人が居る事も現実です。
何とか、このくらいの常識は、元に戻したいと思います。
やはり、会社勤めをしていた頃の事ですが、社外から社員教育のために、経営コンサルタントの先生をお呼びしました。この先生が、最近日本から「ハイ」と言える人がいなくなった。と言われていました。もう20年も前の事です。
もちろん、この返事も「ハイ」だけに固執している分けではありません。使う相手によっては、疎外感もあるでしょう。堅苦しく感じる事もあるでしょう。TPOがこの場合も必要です。
私が練習した方法は、テレビに返事をする方法です。「ハイ」「なるほど」「そうですか」など、失礼にならない返事を選んで、言い方を変えます。ただし、一人で見ている時にしてください。変なおじさんにされてしまいます。
私の失敗談を話しておきましょう。当時日本の空手界では知らない人がいない程、有名な人と話している時です。この方とは、永年の付き合いで打ち解けた関係でした。仲良くなる前には、良くぶつかった事も、何度もありました。
その先生がイタリアに行った時の話しをされていました。足の間にカバンを挟んでいるのに、これを盗もうとした者がいた、と話をされた時に、私が「ほんとですか」と言ったのです。私は「驚嘆」の気持ちを表したのですが、先生の逆鱗に触れたようです。「おまえ、おれが嘘ついてる、言うんか」と言われてしまいました。
その当時では、「ほんとですか!」は、驚嘆の意味で使うのが一般的だったと思います。決して疑いの言葉では無かったように思います。