お習字から書道へ Section 18

 昨日、『お習字から書道へ Section 1』で次に提出予定の課題を掲載しましたが、合否が確定し返送されて来ました。この課題の他半切(35×135cm)が1課題と、色紙大のものが1課題ありました。

 ここに写真をあげているものと、半切は合格しましたが、色紙大のものは、合格しませんでした。理由は、色紙の大きさが違っていました。今日、6時間かけて再提出しました。半切は大きいので写真を撮る事が出来ませんでした。

 合格しても、真ん中の『日月盈昃にちげつえいしょく』の場合は、落款(名前)の書く位置を指摘されています。また、漢字かな交じりの課題『めろ御代佐可盈みだいさかえむと東奈流あずまなる山耳黄金やまにこがねさく』の場合は、「盈」の文字を字典で調べて正しく書くように指示がありました。
 毎回、細かく添削してもらえるので、次の課題を書く時に役に立っています。

 本日投函した再提出の課題が、また2週間後に返送されてくると思います。

 さて、今日は、「払い」についてです。払いについては、縦画からの右への払いは、すでにSection 14で示しましたが、払いには、右払いの他、左払いや「にょう」と呼ばれる点画があります。

 単純にこれと言った例が上げられませんので、いくつかの払いがある「秋」と「月」を書いてみました。

 この文字も東京書道教育会の初級コースの課題にありました。

 ここで「秋」と言う文字を見ますと、左に払う文字の部分が、3つ、右に払う部分が1つあります。

 「月」は、左払いですが、縦画の収筆の内の一つ、真直ぐ伸ばす、と余り変わったところはありません。少し、最後の所で左に払う事に注意すれば書けると思います。

 その他に「にょう」があると冒頭に書きましたが、「しんにょう」がある「遠」と言う文字を「永遠」という言葉で、書いてみました。この文字の左横に落款印を押してみました。

 上が白文で姓名を彫りました。そして、下にあるのが、赤文で今回雅号登録した、「髓心」です。
 これも、複雑な文字ですが、頑張って石材に彫ってみました。

 この落款印の篆刻は、まったくの我流です。ですから専門家から見れば違和感があるのかも知れませんが、私にはこれで十分かな、と思っています。

 その内、上手くなるでしょう。と、楽観(らっかん)しています。

 呼称  

 「払い」と言う呼称は、東京書道教育会で言われている呼び方です。

 『はじめての書道楷書』(関根薫園著)でも、「払い」と言われています。

 また、『入門毎日書道講座1』(青山杉雨・村上三島編)では、「払い」との記載がありますが、縦画の収筆で例に上げました「ル」の右払いについては、「転角」の一部として分類されています。

 
 

 払いのポイント  

 ★図で示した〇の中に数字がありますが、環境依存の文字で文字化けすると分からなくなりますので、ここでは、( )の中に数字を入れて、(1)のように表現します。

 文字を上手く書くためには、文字を観る事が大切である事は、今までに何度か書いています。
 
 今回も私が書いた文字を載せて見ましたが、この文字は手本になる字と思っていません。できればそうありたいと思いますが、まだまだでしょう。

 そこで、私の文字を観て、よく観察してもらい、有名な書家と比較して違いを探しだせれば、それは進歩に繋がると思います。

 今回は、私が払いに気を付けている点を書いて見ます。
 まず、払いには、右と左の払いがあります。「しんにょう」は、後で説明するとして、右払いも左払いも、円弧ではない書き方をしています。これも、流儀により違うと思いますが、東京書道教育会ではそういう指示をされています。

 左払いの場合「秋」の一画目の左払い(1)は、ほぼ真横に払う感じで引いています。この払いの場合は、縦画の起筆と同じように入筆して右にスライドさせ、穂先を中心に腹を右回転させて、左面を紙面につける感じで左に払います。このようにすると、穂先がそろって文字の上を穂先が左に移動します。そして、徐々に腹を紙面から浮かしながら穂先を揃えれば、一画目は完成です。

 「秋」の四画目の左払い(2)の場合は、起筆は同じですが、右にスライドさせるのではなく、右下に少しスライドさせ、左面を紙面につけながら左斜め下に腕全体で直線的に下します。払い全体の長さの三分の二程度まで直線的に下したら緩やかに腹を上げて穂先を揃えます。

 「秋」の八画目(3)は、起筆は縦画を書く時と同じです。そして、縦画の運筆と同様に真直ぐ下に下ろします。八画目の払いの半分くらいまで筆が進んだら、一気に曲げるのではなく、始めは少し左斜めに下しながら少しずつ弧を描くように左に払います。殆ど真横に払うつもりで払いますが、収筆になっても水平線から上がらないようにします。

 「秋」の九画目(4)は、「しんにょう」と一緒に記載します。次は「月」の一画目(5)の左払いの時に注意している点です。
 これは、「秋」の八画目(3)と最後の払うところまで同じです。払って、収筆する位置が、図のように左斜め下になります。この時も(3)と同様あわてて弧を書かないようにします。

 さて、「秋」の九画目です。これは「永遠」の「遠」の「しんにょう」と起筆は違いますが、運筆と収筆の収め方は同じで運筆の方向が違うだけです。
 払いの部分から、私のやり方を説明します。一番気を付けている事は、穂先の位置です。絶対に筆先が文字の真ん中を通らないよう、上端を通る事に神経を集中しています。徐々に線を太くしていきますが、この時は静かに腹を紙面につけ、付ける量によって太くします。払う位置まで来たら、筆をS字型にたわませて弾力をつけ、その返る力で右に筆先を揃えて移動させます。徐々に腹が紙面から離れるようにしています。この時のコツは、筆を紙面に押し付けるのは、筆のたわみだけで、力を入れない事です。

 「しんにょう」と書きましたが、これは、「にょう」の一つの部首名です。他には、「かんにょう」「えんにょう」「きにょう」「そうにょう」「ばくにょう」などがあります。これは、漢字一文字の左側から下にある部分の事を言います。ただし、「しんにゅう」と言う呼び方の方が馴染みがある人が多いのかも知れません。本来は「にょう」が正しい呼称らしいのですが、江戸時代や明治の初期には「しんにゅう」と書かれてあるものもあるということです。現在では、どちらも正しいとされているそうです。

 ちなみに、「之繞」と書いて「しんにょう」と呼びます。 

 

 一口メモ 

 昔から、『永字八方』と言われますが、聞いた事ありませんか。

 一画目の点をそく(1)と言います。
 二画目の始めの横画は、ろく(2)、縦画は、(3)、下のはねは、てき(4)。
 三画目の横画は、さく(5)、左の払いをりゃく(6)。
 そして、右上の四画目の左払いをたく(7)、最後の五画目は右払いたく(8)と言います。
 私の所にある、『はじめての書道楷書』(関根薫園著)には、「」ではなく、「」と言う漢字が使われています。

 この『永字八方』に対して、江守賢治先生は、『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』の中で、次のように記述されています。

 『古い書道の本を開くと、初めのページに必ずこの図を示して、その説明から始まっていた。最も重要な?すべての?筆法が八つに凝縮してあって、その八つの筆法がすべてこの永の1字に含まれているのだから、まずこの永の字の練習から始めようというものであった。
 しかし、まず、これを考えてつくったのは漢の蔡邕(さいよう)とされているが、まだ楷書が生まれていなかった時代の人が、どうして楷書の基本的なものを考えだせたのであろうか。・・・・』

 その他にも『永』の字に、筆法として欠けている点や、部分の呼称との関連性をあげ、否定している文章が見られます。

 私が持っている『三體千字文』(千圃書)にも、正に最初のページに「永字八方」が掲載されています。『はじめての書道楷書』(関根薫園著)にも、始めのページではありませんが、楷書の基本点画として、「永」の字の説明があります。

 確かに『収筆』もありませんし、色々な点で欠落している事が分かります。

 それでも、『永』と言う文字を練習する事は、少なくともこの八つの筆法について知る事になりますから、無駄ではないような気がします。

 

【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.