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東京書道教育会では「部分」、一般的には「部首」と呼んでいると思いますが、その「部分」に従って、文字を選んで稽古して行こうと思っています。
前回は「なべぶた(けいさん)」の文字から「京」「亰」「亥」「育」を書きました。
今回は、「ひとかんむり(ひとやね)」と「はちがしら」そして「はつがしら」を選び、文字は「今、介、会、余、舎、」、「八、六」そして「発」の楷書を、また、「今」「介」「会」「公」「発」の書写体を書きました。
「今」と言う字の楷書と書写体ですが、「ひとかんむり(ひとやね)」が部首になります。
楷書といっても、小学生で教わる「今」という文字と少し最後の収筆の仕方が違います。
この文字は『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』にあるものを手本にして書きました。
下に書いた文字は、書写体と呼ばれています。昔から毛筆ではこの形を書くのが正しい「今」です。
「介」と言う文字も、「今」と同様「ひとかんむり(ひとやね)」の部首です。
下の文字は、書写体です。
「ひとかんむり(ひとやね)」の文字を書く場合に、一番気を使ったのは、部首の開き方が難しいと思います。丁度良い開き方は、下に来る文字とのバランスを考えて開きました。
ここでは、「会」の楷書と書写体、そして「余」と「舎」の楷書の文字を取り上げました。
ここでも、やはり、その文字に適した「ひとかんむり(ひとやね)」が必要です。少しづつ起筆・運筆・収筆の趣が違いますが、これは、部首の下になる文字によって、自然に変わると思います。
点画については、前回までに書いて来たとおりの筆の扱いで書いていますが、漢字一文字を書くには、少しの工夫と、全体を俯瞰する目が必要だと思いました。
この文字も、一度書いてから、バランスを考えて、自分なりに修正してから、清書をしています。
「はちがしら」に「六」が入ると言うのは、この文字を書くまでは、知りませんでした。「なべぶた」だと思っていました。
この文字をよく見ますと、「八」と「公」の「はちがしら」と「六」の「はちがしら」の収筆が、「右払い」と、「とめ」になっています。
「公」と言う文字は書写体を書きました、というより楷書を書き忘れたのですが、楷書では「はちがしら」の収筆は「六」と同じ「とめ」になっています。
私が何度も書き直したのは、「公」の文字です。「八」と「ム」の空き具合は、感覚ですから、如何に見た目、バランスが取れているかに注意を払ったつもりです。
「発」は、楷書と書写体の二文字を書いて見ましたが、これもやはり、文字の中の空間の取り方に苦労しました。
上手な人の字は、空間に広がりが感じられ、同じ文字でも、ゆったりして見えます。
そんな文字が書けるようになれれば、と思っています。
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【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
・江守賢治(2000)『楷行草筆順・字体字典』株式会社三省堂.