中学校で習う漢字三体字典 Part208

 中学校の三年間で習う、1110文字の内の5つの漢字を書いています。漢字は2020年度施行の学習指導要領に対応しています。

 表示は左端が対象漢字、続いてカタカナは音読み、平仮名は訓読み、画数、部首の順です。そして、ことわざ・故事・文章などから一つを選んでその漢字の使われ方を示す事にしました。

 ちなみに、文部科学省では学年ごとに習う漢字は、1学年250字程度から300字程度、2学年300字程度から350字程度、3学年では、その他の常用漢字(小学校で習う漢字1026文字以外の常用漢字1110文字の大体)と学年ごとに決まっていないようです。

1036. [][ヨク][つばさ][画数:17画][部首:羽]

図南となん

 「北冥有魚 其名為鯤 鯤之大 不知其幾千里也 化而為鳥 其名為鵬 鵬之背 不知其幾千里也 怒而飛 其翼若垂天之雲 是鳥也 海運則將徙於南冥 南冥者 天池也」これは「荘子」の逍遙游第一の始めの部分です。
 掻い摘んで内容を書きますと、「北の果てに鯤と言う魚がいて、時節が到来すると鵬と言う鳥になる、兎に角この魚も鳥も大きい、海が荒れる時に、この鵬が大風に乗って南の果ての海へと天翔る。」そんな話です。
 魚も鳥も荘子の空想だと思うのですが、この話から、大事業を成そうと計画する時の譬えとして、この言葉が使われる様です。
 それにしても、この鳥の背は何千里あるか分からないと書いてますから、途方もない大きさの翼なんでしょう。
 この書き方何かを思い出させます。唐代の詩人・李白の秋浦歌は「白髪三千丈」から始まります。そんな表現の仕方が昔からあるようです。

楷書 行書 草書

1037. [][ラ][画数:8画][部首:手]

『荒肝をひしぐ』

 一般的に聞いた事のある言葉としては、「度肝を抜く」でしょう。
 しかし、文学には国木田独歩の「画の悲しみ」の中で、「一見自分は先ず荒胆あらぎもを抜かれてしまった。志村の画題はコロンブスの肖像ならんとは!」と言う表現の一節があります。
 また、「それで送別会の席上で、大いに演説でもしてその行をさかんにしてやりたいと思うのだが、おれのべらんめえ調子じゃ、到底とうてい物にならないから、大きな声を出す山嵐をやとって、一番赤シャツの荒肝あらぎもひしいでやろうと考え付いたから、わざわざ山嵐を呼んだのである。」夏目漱石の「ぼっちゃん」の中には、こんな一節がありました。
 「ひしいで」と漢字は違いますが、こういう言い方をして、驚かす事を表現したのでしょう。
 どちらも明治時代の人ですから、明治時代には、こんな言葉を使っていたのかも知れません。

楷書 行書 草書

1038. [][ラ][はだか][画数:13画][部首:衣]

『家でも外錦』

 社会生活は色々煩わしい事が多くて、逃げ出したくなる事もあると思います。
 特に私はどうも最近感じているのですが、社交的ではないような気がします。ちょっと気が付くのが50年程遅かった気がしていますが。
 でも、人間が社会的な動物であると言う考えは変わっていません。ですから、この諺も充分理解できます。
 裸では風邪を引いてしまいますが、人に合わない時には、清潔にさえしていれば、どんな格好でも良いと思います。
 しかし、外に出る時は、一応人に不快感を与えないような身なりはするべきだと思っています。でなければ、人から疎外されてしまいます。
 この最低限度の礼儀を弁えいないと、社会人としては悖ると思われてしまいます。そして、このような振る舞いが大切なのだと思います。
 一般的には世間体と言うと、悪い意味にしか捉えられませんが、ただ最低限度の世間体は、社会を構成する上では大切な要素であると思います。
 今ではそんな文化も薄れているのかも知れませんが「恥の文化」と言われていた事もあります。恥は世間に対してのモラルを維持する上で、日本の風土に合っていたのかも知れません。

楷書 行書 草書

1039. [][ラ][画数:19画][部首:网]

『甲を経る』

 この言葉、良いように考えれば、長年積み重ねた功績と言う事ができますが、ちょっと視点を変えると、世間の裏表を知って、図々しくなってくる年寄りのような気がします。
 人間には甲羅はありませんが、第16代アメリカ大統領リンカーンが云ったと言われている言葉に「40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」と言うのがあると聞いたことがあります。
 そう考えれば、人間の甲羅は、顔かも知れません。
 よく顔のしわを年輪と言う事があります。そしてその一筋一筋のしわを経験と言うのでしょう。
 しかしそのしわと、その人が生きて来た価値に、相関関係があるとは思えません。
 しかし、顔つきは、その人の人生が現れているような気がしています。若い頃は、あまり意識する事もなく過ぎ去ってしまいましたが、最近は、よくそんな気になる事があります。
 美醜を言うのではなく、そして、自分の事は棚に上げて思うのですが、男女を問わず、テレビを見ていると、主観ですが、いい顔の人と、そうでもない人がいる事に気付きます。

楷書 行書 草書

1040. [][ライ][かみなり][画数:13画][部首:雨]

『北国の

 この言葉、何を言っているのか分かりませんでした。
 そこで、いつものように辞書を引いて見ると「着の身着のままの状態をしゃれていう言葉。「北国に鳴る雷」の「北鳴り」と「着たなり」を掛けたもの。」【出典:ことわざ辞典ONLINE.】ですって。
 着の身着のままは、洒落て言う事なんですかね。それとも、諦めの気持ちを現わしたかったのか、よく理解出来ません。
 ただ北国では雪の降る前に雷がなる、と言われます。であれば、その着の身着のままは、夏を越して着ているので、冬になるときっと寒いでしょうね。

楷書 行書 草書
覚 書

 現在中学生編として、2020年度施行の学習指導要領に対応した漢字を、楷書・行書・草書と三体の文字を毛筆で書いていますが、初めに部首と書いていますが、通常呼ばれている読み方ではないと思われたと思います。

 そこで、一般ではどんな読み方をされているのか一覧にしてみました。

 今回は、中学校三年間で習う文字の1036.~1040.の部首を取り上げていますが、日本では部首の正式な名称は決まってないようです。辞書によって統一されていないのが現状です。

部首 部首名称 (読み方) 部首通称

  1. 【翼】二部(にぶ)・ニ
  2. 【拉】手部(しゅぶ)・て・てへん
  3. 【裸】衣部(いぶ)・ころも・ころもへん
  4. 【羅】网部(もうぶ)・あみめ・あみがしら・よんがしら
  5. 【雷】雨部(うぶ)・あめ・あめかんむり

 ・・・・つづく。