中学校で習う漢字三体字典 Part213

 中学校の三年間で習う、1110文字の内の5つの漢字を書いています。漢字は2020年度施行の学習指導要領に対応しています。

 表示は左端が対象漢字、続いてカタカナは音読み、平仮名は訓読み、画数、部首の順です。そして、ことわざ・故事・文章などから一つを選んでその漢字の使われ方を示す事にしました。

 ちなみに、文部科学省では学年ごとに習う漢字は、1学年250字程度から300字程度、2学年300字程度から350字程度、3学年では、その他の常用漢字(小学校で習う漢字1026文字以外の常用漢字1110文字の大体)と学年ごとに決まっていないようです。

1061. [][リョ][画数:15画][部首:心]

『遠なければ近憂あり』

 今の生活に追われて、それどころでは無いのが現実かも知れません。
 この諺は、未来を考えた上で計画を立てないと、目の前に困った事が起こる。そんな意味で使われます。
 この諺も、論語から来ています。衛霊公第十五 11に、子曰人無遠慮章があり、「 子曰 人無遠慮 必有近憂」と言うのがあります。
 確かに目的や目標を立てて、今を生きると、努力の甲斐があるとは思います。しかし、現実はそんなに生易しくなく、常に自分の考えた将来を、悉く裏切られるのが人生かも知れません。
 それでも、今だけにあくせくして生活するのも、何だか味気なく思えます。せめて小さい目標に達して、喜びを感じる方が良いかと思うのですが。

楷書 行書 草書

1062. [][リョウ][画数:2画][部首:亅]

『一

 世の中が複雑になって、この四字熟語が役立つ事も少なくなったのではないかと思います。
 ただ、この言葉のように、一つが全体の糸口になっている場合には、一つ解決すると全体の解決になってしまう事もあるのではないでしょうか。
 こんがらがった糸と同じで、うまくその原因を探り当てれば、簡単にほどけるようなものです。
 しかし、余計な事をすると、反って複雑になって、解ける物も解けなくなってしまいます。
 物事を解決する為には、早急に取り掛かるより、じっくり考えてから始める方が良い結果になる場合もあります。その見極めが、問題の解決に一番役立つのかも知れませんね。

楷書 行書 草書

1063. [][リョウ][すず-しい][すず-む][画数:11画][部首:水]

『満目荒

 こんな光景は見た事がありません。しかし、戦前戦中生まれの人は、脳裏に焼き付いているのでしょう。
 第二次世界大戦の時に、疎開していた知人は、戦争が終わって、上野駅に帰って来て、そんな光景を目の当たりにしたそうです。
 東京の町が、一面焼け跡になっていたそうです。見えるはずの無かった自分の住んでいたところが、上野の駅から見えたと言っていました。
 戦争の悲惨さを、その人は伝えてくれました。私の父親はビルマで終戦を迎えたので、その悲惨さはよく聞いていましたが、当時子供だった知人も、相当苦労されたようです。
 二度と戦争の起こらない世界になれば良いのですが、世界の情勢は、一触即発の危機のような気がしています。何とか人類の英知を絞って回避してもらいたいと思います。

楷書 行書 草書

1064. [][リョウ][画数:11画][部首:犬]

『窮鳥懐に入れば師も殺さず』

 この諺が出来た当時は、人間も優しい人が多かったのかも知れません。
 今では、追い詰められた鳥が懐に自ら跳び込んできたら、猟師ですから、これ幸いに食べてしまうと思います。私が薄情なのでしょうか。
 ただ、この諺は、救いを求めて来たら、事情は考えないで、助けるべきだと言っています。
 そんな人道的な人ばかりであれば、戦争など起こりようがないと思うのですが。

楷書 行書 草書

1065. [][リョウ][みささぎ][画数:11画][部首:阜]

『下上替』

 この四字熟語は、下克上の世の中だと思います。世の中が安定せず、乱れて大衆は生活も困難になるでしょう。
 そんな時代が、何度もあったようです。これは日本だけに限らず、世界のどの地域でも見られたのですから、人間のもつ愚かな面の象徴かも知れません。
 人の上に立つと言うのは期間が決められていたら、何とか頑張れると思うのですが、いつまでもと言うと遠慮してしまいます。
 にも拘らず、大多数の人は、その地位にしがみ付いています。
 ですから、その人の衰退が少しでも見えれば、取って変わろうとする人が出てくるのでしょうね。いわゆる下克上と言う訳です。
 しかし、実際に人を束ね、組織や国の繁栄を考えて、職務を全うしようとすると、無私でなければならないと思います。
 少なくとも晩節を汚すような振る舞いは、したくないと思っています。

楷書 行書 草書
覚 書

 現在中学生編として、2020年度施行の学習指導要領に対応した漢字を、楷書・行書・草書と三体の文字を毛筆で書いていますが、初めに部首と書いていますが、通常呼ばれている読み方ではないと思われたと思います。

 そこで、一般ではどんな読み方をされているのか一覧にしてみました。

 今回は、中学校三年間で習う文字の1061.~1065.の部首を取り上げていますが、日本では部首の正式な名称は決まってないようです。辞書によって統一されていないのが現状です。

部首 部首名称 (読み方) 部首通称

  1. 【慮】心部(しんぶ)・こころ・りっしんべん・したごころ
  2. 【了】亅部(けつぶ)・はねぼう・ケツ・かぎ
  3. 【涼】水部(すいぶ)・みず・さんずい・したみず
  4. 【猟】犬部(けんぶ)・いぬ・けものへん
  5. 【陵】阜部(ふぶ)・おか・こざとへん

 ・・・・つづく。