【イライラ】を分析する |
イライラする人は、視野が狭い、いわゆる心の狭い人。なんて、言われることありませんか。すぐ怒るとか、堪え性がないとか。ちょっと、気を使って、真面目過ぎるから、とか、几帳面だから、とか。良いのか悪いのか分からないような評価を受けますよね。
でも、「相田みつを」(詩人)じゃないけど、「人間だから」。私から見ると、動物はイライラしないんじゃないのかなと思います。人間の特性のような気がしますね。頭脳が発達するとイライラだけじゃなく、色々良い事も、悪い事も増えるように出来てますね。
だから、5000年も前からあると言われている、ヨーガ(瑜伽)や、2500年も前から「坐禅」とか、今では百花繚乱、体と心を正常に保つ方法が伝えられているんじゃないでしょうか。
「イラ!」とか、「イライラ」してる間はまだいいんです。なぜなら、まだ限界に達していない状態だからです。ようするに、切れていないという事です。
それでも、「ならぬ堪忍、するが堪忍」と昔から言いますが、世の中、腹に据えかねる事の如何に多い事か。
生まれも、育ちも、環境も違う人間同士って、持ってる常識が違うから、一緒に生活して行くって、ほんとに難しい事です。
私はよく社会的人間という言葉を使います。ルールの中で生活が成り立っているという事です。もちろん、ルールを守らなかったら、罰を受けます。社会から隔離されてしまいます。
そして、ルールを守り過ぎると、堅物(かたぶつ)とからかわれたり。「どっちやねん!」(大阪弁ですが)と、イライラします。まぁ、こんなことではイライラしないでしょうけど。
「やまあらしのジレンマ」って話、聞いたことありませんか。社会生活を営む上では、よく引き合いに出されるたとえ話です。寓話(ショーペンハウエル)を、世界的に有名なフロイト(心理学者)が作りました。近づきすぎると相手を傷つけてしまい、自分も傷ついてしまう、また離れすぎると疎遠になりその関係が崩れる。何ともジレンマと言うにふさわしい「イライラ」した関係を、心理学者ならではの切り口で説明しています。(写真はハリネズミですが、ハリネズミのジレンマと言う人もいます)
前に紹介した 座禅の仕方にある、
私が好きな言葉、坐禅儀の一節「節せず、恣(ほしいまま)にせず」でも言っているように、「好い加減」「適当」が人を「イライラ」から救ってくれます。
でも、今「イライラ」してる人の気持ちをイラつかせない事なんて出来るのでしょうか。
科学的には分析できるにしても、状況を打開する事にはなりません。アドレナリンがどうとか、ノルアドレナリンが原因だとか言われても、逆に「イライラ」しますよね。
解決方法は、変な理屈を百並べるより、「退却」です。その状況から逃げ出すんですよ。環境を変えるんです。逃げるなんて「男の沽券に関わる」、なんて考える前に居場所を変えればいいんです。例えば電車に乗っていて「イライラ」したら、次の駅で降りるんです。そして、「おっと、イライラしてたな! イカンイカン!」ですよ。すでに、イライラの対象は、自分の前にはいません。 |
武道家はもとより、武術家にしても、義に沿わない「戦い」はしません。
随分昔の事ですが、私が諍いをさけて、その場から逃げたのは良いのですが、悔しくて悔しくて、腹の虫が収まらないで「イライラ」していた時に、ある人がこんな言葉をかけてくれました。「自分の命と刺し違えても悔いのない奴なのか」と。名言ですよね。今でもその言葉は心に残っています。
もう一年前になりますが、TBSのドラマで「逃げるは恥だが役に立つ」が爆発的な人気になりました。この題名は、ハンガリーのことわざで、「Szégyen a futás, de hasznos.」すなわち「自分の戦う場所を選べ」の意訳だそうです。
人と争いを作るのが仕事のように思われている、暴力団ややくざでも、一端(いっぱし)になると、そう簡単に人と諍いをする事はありません。町をあるいていて、ギラギラとした目で人を睨んでくる人は、一端とはいいません。一端の人は、逆に人と目を合わせないようにしていると感じています。
「正常と異常のはざま」という書物があります。書いてあるのは病理的なものですが、私たち、正常と思っている人間も、この正常と異常のはざまを、いったり来たりしているのではないでしょうか。社会に不適合にならないためにも、「イライラ」を解消したいものです。
フジテレビ系列で『痛快TV スカッとジャパン』が視聴できます。毎週毎週、よくこれだけ、理不尽なイライラする種が尽きないね、と思います。現実はテレビのようにスカッとできないものですから、人気があるのでしょう。歴史上の出来事でも、人と人との関係のなんと危ういものでしょう。だから面白く、文学なども生まれるのかも知れませんが。
適当なイライラは、心の負荷です。心のウエイトトレーニングです。心の成長につながります。でも、心に対して負担が過ぎるイライラは、早いうちに解消しておかないと、正常と異常のはざまから、心は異常に移ってしまいます。これは、病気です。
イライラしていない時に、静かな気持ちになって 『座禅』をすることは、科学的にも脳波をみて、精神作用に効果があることが立証されています。
戦いのバイブル、孫氏いわく「三十六計逃げるに如かず 」。戦略も数多くあるなかで最も優れた戦略であると言っています。
【参考文献】
・森省二(1989)『正常と異常のはざま』講談社現代新書.