『礼と節』を徹底解剖 Part-8

 今国際社会においても、考え方の違いが浮き彫りにされています。国内でも対立する事が多すぎて、疑問符が頭の上を行き交っています。

 考え方ひとつで解決できる問題が山積されています。例えばエネルギーの問題では、小泉元首相の提案を全面的に応援します。もちろん、応援といっても金なし権力なし何にも出来ませんが、気持ちだけは、同意します。

 その理由は、人間がまだ処理も出来ないものをまき散らして、後世に残してはいけないと考えるからです。今の人達が分からなくても、未来に解決できる事は、沢山あると思います。しかし、人間が消滅するか地球が消滅するか、放射能の毒性が消滅するか、そんな事を未来に託してどうするんですか。

 ちょっとした考えたかの違いだと思います。今の生活を維持するためと言いますが、誰の生活を維持するためですか。私にはどうも納得できません。

 他の国の考え方を変えさせようと思っても、一筋縄ではいきません。国と国とが合意しても、破棄されようとしているのですから。
 自分の国の上をミサイルが通り過ぎても、あるいは領海侵犯があっても、いつもいつも、強く抗議する事ができるだけです。
 その理由はいたって簡単、考え方が違い、話にならないからです。

 下世話な話になりますが、相撲の世界の問題でも、考え方の違いで、大騒動です。本当に困ったものです。下世話と言いましたが、この考え方が、国を作っている事に目を向けないといけないのではないでしょうか。

 『礼と節』を解剖し、人間の本質に迫ろうと、1500年も前に書かれた十七条憲法を解明しています。この訓戒を政治家だけではなく、マスコミも国民も、耳を傾ける事から、国造りをやり直したらどうでしょうか。

 前回同様原文は、下記のバーをクリックすると見る事が出来ます。

『十七条憲法 原文』
第一条 一曰。以和為貴。無忤為宗。人皆有黨。亦少達者。是以或不順君父。乍違于隣里。然上和下睦。諧於論事。則事理自通。何事不成。
第二条 二曰。篤敬三寳。三寳者仏法僧也。則四生之終帰。萬国之極宗。何世何人非貴是法。人鮮尤悪。能教従之。其不帰三寳。何以直枉。
第三 三曰。承詔必謹。君則天之。臣則地之。天覆地載。四時順行。万氣得通。地欲覆天。則致壊耳。是以君言臣承。上行下靡。故承詔必慎。不謹自敗。
第四条 四曰。群卿百寮。以礼為本。其治民之本。要在乎礼。上不礼而下非齊。下無礼以必有罪。是以群臣有礼。位次不乱。百姓有礼。国家自治。
第五条 五曰。絶餮棄欲。明辯訴訟。其百姓之訴。一日千事。一日尚尓。况乎累歳須治訟者。得利為常。見賄聴 。便有財之訟如石投水。乏者之訴似水投石。是以貧民則不知所由。臣道亦於焉闕。
第六条 六曰。懲悪勧善。古之良典。是以无匿人善。見悪必匡。其諂詐者。則為覆国家之利器。為絶人民之鋒釼。亦侫媚者対上則好説下過。逢下則誹謗上失其如此人皆无忠於君。无仁於民。是大乱之本也。
第七条 七曰。人各有任掌。宜不濫。其賢哲任官。頌音則起。 者有官。禍乱則繁。世少生知。尅念作聖。事無大少。得人必治。時無急緩。遇賢自寛。因此国家永久。社稷勿危。故古聖王。為官以求人。為人不求官。
第八条 八曰。群卿百寮。早朝晏退。公事靡 。終日難盡。是以遅朝。不逮于急。早退必事不盡。
第九条 九曰。信是義本。毎事有信。其善悪成敗。要在于信。群臣共信。何事不成。群臣无信。万事悉敗。
十条 十曰。絶忿棄瞋。不怒人違。人皆有心。心各有執。彼是則我非。我是則彼非。我必非聖。彼必非愚。共是凡夫耳。是非之理能可定。相共賢愚。如鐶无端。是以彼人雖瞋。還恐我失。我獨雖得。従衆同擧。
第十一条 十一曰。明察功過。罰賞必當。日者賞不在功。罰不在罪。執事群卿。宜明賞罰。
第十二条 十二曰。国司国造。勿斂百姓。国非二君。民無兩主。率土兆民。以王為主。所任官司。皆是王臣。何敢與公。賦斂百姓。
第十三条 十三曰。諸任官者。同知職掌。或病或使。有闕於事。然得知之日。和如曾識。其非以與聞。勿防公務。
第十四条 十四曰。群臣百寮無有嫉妬。我既嫉人人亦嫉我。嫉妬之患不知其極。所以智勝於己則不悦。才優於己則嫉妬。是以五百之後。乃今遇賢。千載以難待一聖。其不得賢聖。何以治国。
第十五条 十五曰。背私向公。是臣之道矣。凡人有私必有恨。有憾必非同。非同則以私妨公。憾起則違制害法。故初章云。上下和諧。其亦是情歟。
第十六条 十六曰。使民以時。古之良典。故冬月有間。以可使民。従春至秋。農桑之節。不可使民。其不農何食。不桑何服。
第十七条 十七曰。夫事不可独断。必與衆宜論。少事是輕。不可必衆。唯逮論大事。若疑有失。故與衆相辨。辞則得理。
[出典]金治勇(1986)『聖徳太子のこころ』大蔵出版.

 現代文を要約したものを下記に示してあります。バーをクリックすると見る事が出来ます。
『十七条憲法 現代文要約』
1.和を以て貴しとなす。という、有名な言葉を一番最初書いています。
2.仏・法・僧を信奉しなさい
3.王(天皇)の命令に、謹んで服従しなければ、国家の存亡にかかわる。
4.上の者が礼を遵守しなければ、下の秩序はみだれ、下の者が無礼であれば罪人を作る。
5.法を行う者は、接待や供与を受けず、厳正に審判すること。
6.面従腹背の輩は、国家を滅ぼす。
7.権限の乱用は国家の存続をおびやかす。
8.公務につく者は、早く出勤し、遅く退出する。
9.真心は人の道の根本である。真心をもって仕事をすること。
10.人間は賢愚を同時に備えている。耳輪に端がないのと同じである。自分がすべて正しいと言う考えを持たない事。
11.信賞必罰の励行。
12.税金は重複して取ってはならない。
13.職務に対しては熟知し、公務を停滞させてはいけない。
14.嫉妬の禁止。
15.私心を捨てて公務にあたる事。
16.人民を使役する時は、時期、環境を考えてする。
17.重大な事柄を判断する時は、必ず衆知を集め議論したうえで決める事。

 本日のテーマは、『十七条憲法』第十条です。
 まず漢文を見て見ましょう。『絶忿棄瞋 不怒人違 人皆有心 心各有執 彼是則我非 我是則彼非 我必非聖 彼必非愚 共是凡夫耳 是非之理能可定 相共賢愚 如鐶无端 是以彼人雖瞋 還恐我失 我獨雖得 従衆同擧

 それでは、読み下す事にします。

 『忿を絶ち瞋を棄つ 人の違うを怒不 人に皆心有り 心は各執す有り 彼は是則我に非ず 我は是則彼に非ず 我は必しも聖に非ず 彼は必しも愚に非ず 共に是凡夫耳 是理之非ず可能定むべき 相共に賢く愚り 鐶の端无如し 是を以て彼人瞋と雖も 還て我失を恐れよ 我獨得雖ども 衆に従いて同擧いよ

 現代の言葉に置き換える前に、まず難しい漢字を分かりやすくしておきましょう。
 「忿」を怒りに、「瞋」を同じく怒り(但しこの場合は自分に逆らう事を怒る)、「執」を執着、「聖」を賢い、「耳」をのみ(だけ)、「鐶」を輪、「雖」をいえ、に変えて読んで見ましょう。

 『怒りを絶ち、怒りを捨て、人が同意しない事に腹を立てない。人には皆それぞれに考えがある。自分が思う事に執着する気持ちがあります。彼は自分ではなく、また、私は彼でもありません。私が必ずしも賢いとは限らず、彼も必ずしも愚か者ではありません。共に凡夫なだけです。これが道理である事が分からなければ何も決める事ができない、彼も我も賢くそして愚を備えている、輪の端のようなものである。この事をよく理解して、人が逆らったとしても、まず自分を顧みて非が無いか確かめなさい。自分が適任と思っても、皆の意見に従って皆が選んだ人を推挙しなさい。』

 何度も書きますが、1500年も前に書かれた訓戒です。凄いと思う反面、何と人間は成長せずに1500年もの時を過ごしてきたのかと、呆れてしまいます。

 私も20代では、「話は最後まで聞いてやれ」と言われる程、人の話を聞いていませんでした。私にとっては、本当に人の話を聞く事は難しい事です。
 古希を過ぎても、まだまだ、人の話を聞けるようになっていません。小賢しい限りです。

 人の話に耳を傾けない事は、やはり『礼儀に欠ける』ことになります。下の図では、無礼にあたるでしょう。気を付けなければいけません。

 また、人の話を遮ったり、皆が話をしている内容を変えたり、自分の言いたい事だけを言うと言うのも、無礼者です。自分で無礼である事を知る事から始めなければ、身に付ける事はできません。あなたには、そんな所がありませんか。私は大いに反省しています。
 出来れば、見た目の礼儀正しさよりも、心の礼儀正しさを身に付けたいと思っています。