【前蹴りを如何に早く、加速度を上げて蹴れるか】 |
蹴りについて、昔を振り返ってみますと、「高足、鈍足」という言葉がすぐに思い浮かびます。
二足歩行の人間にとって、二つの足で立っていても不安定なのに、一つの足で立って、しかも相手を蹴る。こんな不安定な事はない、と考えるのはもっともな話であると思っています。
当時は、帯の位置より上に蹴ることは、どちらかというと、捨て身技に相当したと思います。
しかし、試合が定着するに従って、上段回し蹴りなどが盛んになり、ブルースリーの映画により、後ろ回し蹴りなども取り入れて練習するようになりました。
今では、全日本空手道連盟の試合では、多種多様の蹴り技を見る事ができます。特に外国勢の蹴り技の多彩さに、目を見張るものがあります。
これも、「ルールが変わるとゲームが変わる」の一面だと思っています。
一方、空手の蹴りは威力がないという風評もあったように思います。ある意味、私も同意しなければならないのかとも思っていました。もちろん、私が学んだ流儀とは違うところでは、違った基本で、前蹴りを習った人もいると思います。ここでは、私が学んだ流儀の基本と、私が独自に研究した、前蹴りの基本について、説明をしたいと思います。
ただ、突き三か月、蹴り三年と言われるように、その稽古の過程で、基本から応用への変化があってしかるべきかな、いや、自分なりに変化させて行くのが「守破離」の精神ではあると思っています。
さて、初心者が習う基本的な前蹴りを見て見ましょう。
- 前屈立になり、後ろの足を上げ膝を高く抱え込みます
- 抱え込んだ足は、出来るだけ踵をお尻につけるようにします
- 足を緩めると前に足は振り出されるので、その反動で前に蹴ります
次は、私のやり方です。
- 前屈立になり、後ろの足の踵をできるだけお尻に近づけます
- この時、膝は床を向いています
- 踵がお尻に着く寸前に、膝を相手に向けます
- 同時に、上足底が相手の中段に向けて飛び出します
- 踵は、膝が床の方から前に方向に小さな円を描きその遠心力で、足を伸ばします
- エネルギーの流れは、股関節を中心とした回転エネルギーを股関節を前に移動することにより、直線的なエネルギーに変換することです。
- 注意するべきことは、突きの場合と同じで、力を入れずに動きで速度を上げ、衝撃力を増すことです。
- 十分速度を上げる事によって、相手に当たった時には、上足底には相当の反作用の力が加わります。初めから上足底に力を入れるのではなく、反作用に耐えるような、力の入れ方をします。これは、突きの場合と同じで、当たってから力を入れて耐えるという事です。
- この衝撃力に耐える力の養成は、巻き藁やサンドバッグを蹴る事によって、自然に足先に力が入るようにし、決して意識して上足底を上げたり足首を固定するように力を入れない事です。
- 物に当てないで蹴る場合は、上足底の形を作るだけにするのが、早く蹴るコツと言えるでしょう。
言葉で説明するより、動画の方が解りやすいと思います。
【参照】
・守破離:剣道や茶道などで、修業における段階を示したもの。「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。出典:デジタル大辞典,小学館.