『礼と節』を表現してみよう。 Part-13 4. 『礼節』として伝えられている作法-----【礼の仕方・立礼】

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『礼節の作法』目次

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礼の仕方  座礼
食事の仕方
座席の順序
ビジネスマナー
参列の仕方
しつけ
和室での礼儀
洋室での礼儀
同席の仕方
気配り
立てるという事
 

 前回は、座礼について、日本空手道髓心会の行っている方法を載せました。
 今回は、同じように立礼について、現在、日本空手道髓心会が行っている方法を掲載します。

 その前に、前回の最後に、『礼』の時の視線を考えて見ますと書きましたので、視線について書いて見ようと思います。

 一番違和感を感じたのは、「燃えよドラゴン」だったと思いますが、ブルースリーと弟弟子が組手をする前に「礼」をした時の事です。お辞儀はお辞儀なのですが、頭は下げますが、視線は合わせたままでした。
 私から見ると、何とも不格好な「礼の仕方」だと思いました。今から45年程前の事です。
 それから、同じようなシーンを、何度か中国人が出てくる映画で見かけました。
 相手から目を離すと、攻撃されるという、意味合いで理解している人がいるようですが、私も形意拳を少し、故許鴻基師に手ほどきを受けたのですが、そのような「礼」の仕方は記憶にありません。と、言うより『礼』について、習った記憶はありません。

 私は武道での相手に対する「お辞儀」と言うのは、稽古や練習を目的にする場合に、相手に対する敬意を表すものだと思っています。いわゆる信頼関係にある事を確認するための「お辞儀」であると思っています。

 もし、これが「真剣勝負」や「武術」「格闘」となると、相手に対して「お辞儀」など無用です。それは、命を懸けた戦いですから。戦争する前に、お互いに、『礼』など考えられません。
 もし『お辞儀』をして『礼節』を表すのであれば、戦いを回避するため、聖徳太子の十七条憲法第一条のように、議論をする機会を持てるでしょう。

 相手に対する敬意を表すためにする「お辞儀」の場合、視線も『礼儀』の一つですから、相手から外さなければなりません。だからと言って、武道としての気構え、姿勢を崩してよい訳ではありませんから、背筋を伸ばして、低頭した角度に沿って視線を動かすのが合理的だと思っています。
 結果的には、相手との距離が1.5mの場合、相手の足元が見える程度に視線を移す事になります。決して顎を上げた状態で、相手の目を見て「お辞儀」をする事はありません。

 「目は口程に物を言う」言葉通り、視線の向け方によって、著しく『礼』を欠く行為になります。下世話な言い方をすれば、「ガンを飛ばす」「メンチきる」「がんをつける」など、睨みつける行動は、戦闘モードですから、決して『礼節』に適うものではありません。

 ですから、よく「話しを聞く時は、相手の目から視線を外さない」態度が『礼節』のように言われていますが、私は『非礼』であり『無礼』な態度であると思っています。もちろん、よそ見する事が『礼』に適っている分けではありません。また、相手の顔、あるいは肩より下に視線を移す事も『非礼』であると思います。
 ただし、大勢で一人の人の話を聞く場合、例えば講演とか、道場で指導を受ける場合などは、相手から視線を外してはいけません。
 相手から視線を外さないという事と、目を凝視する事とは違います。

 この事も「小笠原流礼法入門、美しいふるまい」(出典:小笠原敬承斎[1999]『美しいふるまい』株式会社淡交社.)には、伝書に書かれてある事を記載されています。
 「うかうかと人の顔をまほり座敷を見めぐるべからず」
 「主人に差より物を申し承る事。主人の膝をまほって申し承るべき也。又大方ならば、左の袖を見て申すべし。同輩ならば顔を見て云うべし。」
 これは、立礼・座礼を問わず、同じように視線を移します。」
 初めの文章は、相手の顔をジロジロ見たり、室内をつぶさに見ないようにしなさい。
 次の文章は、上の人と対する時は、伏目がちに、そして同僚に対しては視線を合わせて話をするように、と記載されています。
 ただ、小笠原流では、目から胸のあたりを縦の範囲、横は肩の幅とした四角形を視線の範囲とし、その四角形から視線が外れた場合は、『礼節』を欠くと考えていますので、私が考える『礼節』を表現する視線の在り方と、差異はないと考えています。
 私の場合は、目の間と、鎖骨を結んだ三角形の間を見るように心がけています。
 また、小笠原流では、「遠山の付け」と言って、「五輪書」に書かれてある 観見の目付と同じような視線の在り方を推奨されています。

 私の若い頃のように、先生から「良い刀は鞘に入っているものだ」といわれるような目つきは、『礼節』を欠く事この上ない視線だったと思っています。

 さて、本題に移りましょう。今日は、立礼の仕方です。

1. 閉足立ちで起立します。手は自然と体側に垂らします。
2. 腰の位置から背筋首筋を伸ばしたまま、低頭(頭を下げます)します。
3. 低頭する角度は、15度から30度とします。

 

 小笠原流では、『息を吸いながら身体を前傾させ、止まったところで息を吐き、さらに息を吸いながら元の姿勢に戻る方法を「礼三息」と言う(出典:小笠原敬承斎[1999]『美しいふるまい』株式会社淡交社.)と記載されています。

 日本空手道髓心会では、上に書いた方法で、道場の出入り、基本・型・組手の用意の姿勢の前に立礼します。もちろんこれを習慣にしてもらい、試合会場への出入り、どこかに訪問した時の出入りなどに、あるいは、人との挨拶に、立礼が自然にできれば良いと思います。

 代々礼儀の専門家である、小笠原流においては、立礼を「会釈・敬礼・最敬礼」と三通りに分けています。この内、最敬礼は別名直角礼とも言われ、直角近くまで前傾するように言われていますが、できる範囲で最も深く前傾すれば良いとの記載もあります。
 私は、現在腰を痛めていますので、右の写真が精いっぱいの前傾姿勢です。
 この「お辞儀」の仕方は、神主さんが祝詞をあげる時に見る事ができます。いわゆる「拝礼」です。

 警察や自衛隊、あるいはボーイスカウトが行う敬礼は挙手の敬礼で、この敬礼の一つがお辞儀です。どちらも、相手に対して『礼』の気持ちを表す作法です。
 また、外国では、握手や腰をかがめて相手に対しての信頼関係を確認する方法も、一つの『礼』を表す作法と言えます。
 世界中には、「えっ」と驚くようなしぐさで挨拶をする作法もありますので、「ところ変われば品変わる」の通り、千差万別の『礼法』がある事も、知っておく必要がありそうです。

 また、茶道では『立礼』と書いて「りゅうれい」と読み、1872年に京都で開催された博覧会で、海外からのお客様をおもてなしするために、テーブルを使って日本の文化を伝えたと聞いています。この時の茶道における作法の事を「立礼式」と言うそうです。

 自分の『礼法』を身に付けながら、他の『礼法』を知っておくことも、『礼節』に適う事だと、思っています。

 

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