空手道における型について【8】
平安四段 1~13

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 文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。
 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。

 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。
〔ページを遡る煩わしさを避けるため、説明部分は、前回までと重複して記載しています。

 

平安四段へいあんよんだん-1~13

旧称ピンアン四段
全部で二七挙動、約一分間で完了する。
演武線は大体士字形に近い。

用意の姿勢は、平安初段と同じ。

1.右足原位置、左足を第一線上に踏出す(右足後屈)と同時に両手を開き(四指を揃へ伸して拇指を曲げる)、右手を額上に(肘を曲げて甲を内向側に)上げ、左手前膊を(肘を曲げて甲を左側に)左横に向って直立し、顔を左方に向ける。
(注)平安二段1.の両拳を開いた形である。型の意味も平安二段1.と大体同様で、左手にて敵の手首を受け、これを掴んで引寄せながら、右手刀にて敵の人中又は頸動脈を打とうとする気持ち。

2.両足の位置そのまま、左足後屈に直して顔を右方に向けると同時に、右手(開いて)で右方上段、左手甲を額上に当てる、1.と左右反対の姿勢である。

3.右足そのまま、左足を一歩第二線上に踏出すと同時に(前屈)両拳を交叉(両手の甲を合せる様にして右手首が上)して前方下段に突出す。上体を起して顔は前方敵の顔に向ける。
(注)両肘を十分伸ばして、両拳は身体より20cm位離れる。敵が金的を蹴って来たので、両拳でその向脛を受ける気持ち。ゆえに上体が前屈みになったり、視線が下へ向いたりしてはいけない。

4.左足そのまま、右足一歩前進(第二線上へ、後屈)すると同時に、右拳中段受け(手甲下)、左拳は右肘に軽く接する(手甲下に)。

5.右足そのまま、左足を右足に引つけ顔を左方に向けながら、右拳右腰に(手甲下)とり、左拳をその上に(手甲前)重ね、左足裏を右膝上にあげる。平安二段7.と左右反対の姿勢。〔写真参照〕

6.右足で立ったまま、左方に向って左裏拳、左足刀を同時に飛ばす(平安二段8.と左右反対の姿勢)。
(注)足刀とは足の小指側をいふ。型の意味は平安二段7.8.8.を参照せよ。
『相手の脇腹の上部、腕の付け根を蹴り上げる』
横蹴りは足刀部分が水平、もしくは踵の部分が指先よりやや上で蹴る事が定着していると思いますし、理論的にも原点に戻す必要はないと、考えます。

7.左足を左第三線上に下す(左足前屈)と同時に、右猿臂(拳甲外に向け、右前、腕と胸との間約15cm)を突出し、左掌で右肘外を打つ。
(注)左方の敵に対し、左裏拳で人中を、左足刀で脇腹(又は金的)を攻撃すると同時に、左足で敵の胸に踏込み、敵の手を掴んで引寄せながら右猿臂を当てる気持ち。
『この時の立ち方は前屈立ちですが、前足と後ろ足の内側が一直線になり、肩幅開かないようにしています。』

★蹴った左足で敵の胸に踏み込む動作を考えますと、かなり無理な光景が浮かびます。そこで、踏み込む動作を蹴込み又は蹴上げの横蹴りと解釈する場合は、左手で相手の手を掴んで引き寄せる事も可能であると考えます。★

8.左足そのまま、右足を寄せて左膝上にあげ顔を右に向けると同時に、左拳を左腰に(甲下)右拳をその上に(甲前)に構へる。平安二段7.と同じ姿勢。
『髓心会では、原点と同様、左足に右足を寄せて閉足立になってから、右足を上げて蹴ります。』
この左足の位置に右足を寄せるのは、髓心会では原点と同じですが、会派によっては逆に右足に半歩移動しながら横蹴りをしている所もあります。

9.左足で立ったまゝ、右方に右裏拳、右足刀を飛ばす。平安二段8.と同じ姿勢。

10.右足を右第三線上に下す(右足前屈)と共に、左猿臂を突出し、右掌にて左肘外を打つ。6.と反対の動作。

11.両足の位置そのまま、上体前に向く(両膝伸して)と同時に、右手(開いて、甲を額に接する様)額前より右方へ大きく半円を描く様に打ち伸ばす(手甲下)と同
時に、左手(開いたまま、甲内側に)上段受け。
(注)前方より突来る敵の手首を右手にて取った心持。
『右肩右腰を出して体を捻じり、左手で相手の攻撃を手刀で揚げ受けし、右手刀で相手の頸動脈を打っています。』

原点のように右手で相手の手首を取る場合には、左手を上段受けに解釈するには少し無理があるが、右手で相手の手首を掴み、左手は構えとすれば、飛び込みながら、左手で相手を掴み引き寄せ、上段を蹴り裏拳で極めるという方法だと理論的ではある。問題は、左手の解釈による。

12.そのままの姿勢で、右足をなるべく高く右手先を蹴上げる。
(注)相手の手を右手にて掴み引きながら右足でその関節を蹴折る意味。ゆえに右足先は右手先より高く上げる事が必要。蹴った足は直ぐに引くよう。

13.右足一歩飛込む(右足で立ち、左足は後に軽く添へること)と同時に、伸ばした右手は一旦胸前に引くや否や、裏拳にて前方を打ち、額の左手は一旦前方に
伸す様に(物を掴み寄せる気持ちで)して腰に引く。
(注)型の極る時に「エイ」と気合を掛けよ。
『裏拳をする時の立ち方は、交差立と呼んでいます。ただし、原点とは両足の向きがやや違います。写真を参照してください。』

演武線ではイメージが湧きにくいと思いますので、実際の足跡をたどってみました。
 次回は、平安四段後半を掲載します。

【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・道原伸司(1976)『図解コーチ 空手道』成美堂出版.
・道原伸司(1979-1988)『空手道教室』株式会社大修館書店.
・田村正隆他(1977)『空手道入門』株式会社ナツメ社.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1989)『ベスト空手5 平安・鉄騎』株式会社ベースボール・マガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(上)』株式会社池田書店.
・金澤弘和(1977)『新・空手道』株式会社日東書院.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.

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