空手道における型について【10】
平安五段 1~12

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 文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。
 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。

 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。
〔ページを遡る煩わしさを避けるため、説明部分は、前回までと重複して記載しています。

 

平安五段へいあんごだん-1~12

型についてのプロローグを載せていますので、参照してください。

旧称ピンアン五段
全部で二五挙動、約一分間で完了する。
演武線は丁字形に属する。

(用意)八字立、平安初段の用意の姿勢に同じ。
『髓心会では外八字立と呼称しています。』

1.右足そのまま後屈、左足を左第一線上に開くと同時に、顔を左に向け、左拳中段内受け(甲下)、右拳腰にとる。平安三段1.と全く同様。
『髓心会では、左中段外受け(旧称:左中段内受け)と言っています。』

2.下体そのまま、左拳腰に引くと同時に、右拳を左方に上体を左に捻じる様にして、中段突き。但し右肘少し曲る位がよし。
(注)左方の敵の拳を左手で内受けすると同時に、その手を掴んで胸部を突く心持。
『この逆突きは、身体捻じって肘は曲げないように突いています。会派によっては、前屈逆突きをしている所もあります。ほとんどの会派では逆突きの腕は肘を伸ばしているようです。』
『この場合は相手の懐に入り込む動作になりますので、腕は原点のようにやや右肘を曲げる方が有効だと思いますので、戻すべきでしょう。』
相手の手を掴む場合、手首ではなく、腕の上腕部を抱え込むようにすると、関節も取れますし、相手を固定できると考えています。

3.左足そのまま、右足を左足に引つける(閉足立)と同時に、顔を右に向け右拳腰に、左拳胸部前方(手甲上、胸から15cm位)水平に構える。
(注)この所はユックリ、手・足・顔の三つが一致するよう。目は左拳を追うような心持で右に移せばよい。左拳はいわゆる水流れの構えで拳先が少し下り気味に右脇の方に向うまで来る、水月を護るのである。
『写真参照:水流の構え』写真では正面を見ていますが、左手が極まる時に着眼は右に向けます。

「水流れ」の理由は定かではありません。現在は、鍵突きの構え、あるいは腕が水平と、色々な方法で行われているのが現状です。

4.左足そのまま後屈、右足を右第一線に開くと同時に、右拳中段内受け、左拳腰に。1.の反対、平安三段4.と同じ。
(注)1.4.共に両拳に反動をつけるように、先ず交叉してから中段受けをする事も平安三段の時と同じ。

5.下体そのまま、右拳腰に引くと同時に左拳を右方に(上体右へ捻じるようにして)中段突き。但し左肘が少し曲る位。
『中段突きは肘が曲がるように突く』
『髓心会では、肘を曲げずに中段突きをしています。この方法も会派団体によって違います。2.と同じです。』

6.右足その、左足を右足に引きつける(閉足立)と同時に、顔を前に向けながら、左拳腰に、右拳を胸前に水平に構える。(写真:水流の構えの逆の動作)を参照せよ。

7.左足そのまま、右足を第二線上に一歩前進する(後屈)と同時に、右拳中段内受け、左拳は右肘に接する(共に手甲下)。
(注)身体は左向、顔は前を向く。
『髓心会では写真の様に支え外受け(旧称:支え内受け)をしています。』

8.右足そのまま、左足第二線上に一歩踏出す(前屈)と同時に、両拳を交叉(右手を上に両拳の甲を合せるように手首を重ねる)して前方下段に突き出す。上体を起して目は前方を見る。平安四段3.に同じ。
(注)両肘を伸ばして、両拳は左膝より少し内側。敵の下段蹴りを受けた形。
8.9.10.の動作は写真を参照してください。左が8.と9.、右が9.と10.の連続です。

9.下体そのまま、手首を交叉したまま1.のように頭上に突上げつつ両手を開く。
(注)この所は機敏を要する。敵の下段攻撃を受けた時、続いて上段を襲って来たので間髪を容れずこれを突上げた心持。機に臨み変に応じて自由自在に防御するのが空手の特長である。敵に依って転化するとはこれ等の事をいったものであろう。
『髓心会では、上段交叉受けは、写真のように頭上ではなく、交叉した部分が上段攻撃を受け切る位置まで上げています。したがって、「空手道教範」にある写真のように完全に腕を頭の上まで持ち上げていません。』

10.下体そのまま、両手首をつけたまま、一旦両掌を向い合せるように開くと直ぐに、左手首で右手首を押しつけるような心持で(写真)の姿勢をとる。即ち右手(掌は上)を前方に伸ばし、左手(掌は下)と手首の所で交叉するように。
(注)上段交叉受けの時、相手が更に左拳で突いて来るのを押えて受ける意味。
『髓心会では、この時右手の肘を曲げて、左掌と重ねて右体側の位置で交差しています。これは右手を伸ばすと、両手を重ねた部分が自分の正中線上にくるため、右側に外すためにしています。』

◆攻撃の手は肩を軸に円を描きますので、中段攻撃を押さえると理論上は、正中線上でも当たらなくなります。しかし、上段攻撃の場合にこれを押さえると、逆に上段から肩の高さで一番長くなりますので、当たる事になります。 そして、大事なのは、肩を軸に固定されている事はありえないという事です。攻撃は、支点も前に移動していますので、相手の攻撃を外す場合は、体側外が原則であろうと思います。これも原則であって、受けと言うのは、外す場合、取る場合、止める場合と色々ありますので、その防御の方法によって変わります。◆

11.下体そのまま、左拳を前方に突き出すと同時に、右拳腰に引く。

12.左足そのまま、右足第二線上に踏出す(前屈)と同時に右拳中段突き。左拳腰に引く。
(注)この所は止めを刺すという心持で十分に力を込め気合を掛けよ。

演武線ではイメージが湧きにくいと思いますので、実際の足跡をたどってみました。ここでは、黒の塗りつぶしの足形と黒枠の足形が後半になります。

 次回は、平安五段後半を掲載します。

【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.
・道原伸司(1976)『図解コーチ 空手道』成美堂出版.
・道原伸司(1979-1988)『空手道教室』株式会社大修館書店.
・田村正隆他(1977)『空手道入門』株式会社ナツメ社.
・杉山尚次郎(1984-1989)『松濤館廿五の形』東海堂.
・中山正敏(1989)『ベスト空手5 平安・鉄騎』株式会社ベースボール・マガジン社.
・内藤武宣(1974)『精説空手道秘要』株式会社東京書店.
・金澤弘和(1981)『空手 型全集(上)』株式会社池田書店.
・金澤弘和(1977)『新・空手道』株式会社日東書院.
・笠尾恭二・須井詔康(1975)『連続写真による空手道入門』株式会社ナツメ社.

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