これまで、鷹見芝香 先生の文字を手本に、観察してきましたが、これまでも何度か触れていますが、文字はこれが正しいというものはありません。
しかし、お習字(書写)や書道を習得してみようと思っても、正しい文字が分からないという事は、なんだか心もとなく、不安な気持ちになります。
それでも、通信教育でさえも、その手本から逸脱した文字を書くと、厳しく指摘を受ける事になります。
そこは、「郷に入っては郷に従え」のように、素直になり、 瀉瓶(瀉瓶:クリックすると「髓心とは」が開きます。その中の『心と体』を開きますと、真ん中から終盤に瀉瓶について書いてあります。)の態度になる事ができれば良いのですが、空手を習う時のように、まだ何も知らない時に、どこかの道場に入る場合はともかく、字は物心つくと書けるようになります。と言うより、教育してくれます。
今では想像できないかも知れませんが、義務教育が徹底されなかった時代では、文盲の人はかなりいたようです。今でも世界に目を向けると教育が行き届いていない国は、まだまだあるようです。
空手などあまり生活に密着していない習い事の場合、私が致道館(現在日本空手道致道会)に入門した時などは、糸東流から松濤館流に変わったわけですが、その時は、流儀が違うからと納得する事は出来ました。
字の場合は、先述したように、すでに自分の字がある程度出来ていると思いますから、素直になろうと思っても、疑問がふつふつと湧いてくるのが人情ではありませんか。特にある程度上手に書ける人であれば尚更の事です。
ですから、誰か一人の人の文字を手本にして一応の軸を作って置くことを勧めています。
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今日は、「ひらがな」の一応締めくくりとして、鷹見芝香先生の文字と山下静雨先生の文字を、対比させてみました。どちらも、私が模写したものですから、原本では無い事を了承してください。
上に書かれてある文字が、鷹見芝香先生の文字で、やや薄く背景が薄く色の付いている方が山下静雨先生の文字です。
上下を見比べてもらえれば、その違いが分かると思います。どちらも日本では名のある書家ですが、これほどの違いがある事を知っておくと良いと思います。
また、ここでは載せていませんが、江守賢治先生の「ひらがな」にも違いがありますし、東京書道教育会の手本にも違いが見られます。
私は、どちらと言うよりも、先に鷹見芝香先生の文字で勉強したものですから、馴染みがあります。しかし、山下静雨先生の文字は、実に上手な文字だと思います。ですから、個人でただ綺麗な文字を書きたいのであれば、良いとこどりをしても良いと思います。
しかし、現在の私のように、普通科師範から正師範を目指しているように、どこかの団体に帰属していて、その中で評価を得たいのであれば、その団体が手本にしているものに、傾倒するべきでしょう。
また、文部科学省後援の硬筆毛筆書写検定試験を目指すのであれば、日本習字普及協会や(一財)日本書写技能検定協会などから出版されている書籍を手元において練習する方が良いと思います。
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毛筆書写検定の臨書―文部省認定
posted with ヨメレバ江守 賢治 岩崎芸術社 1978-05 |
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【参考文献】
・鷹見芝香(1966)『ペン習字』 株式会社主婦の友社.
・山下静雨(1979)『ボールペン習字』株式会社ナツメ社.