『現代文』

『世間の人が会うと、少しの間も沈黙する事が無い。必ず言葉をかける。その内容は、多くは役にも立たない話である。世間の噂話、人の是非、お互いに失うものは多く、得るものは少ない。
　
　話の内容が、お互いに役に立つものではないという事を知らないのだ。』

『閑話』

　「口は禍の元」と言いますから、十分に解っています。と言いたいところです。

　「沈黙は金雄弁は銀」と言う事も知っています。にも拘らず、私だけではなく、人は何故お喋りなのでしょう。

　確かにここで言われているように、お互いに役に立たないどころか、自分の発する言葉によって相手が傷つくこともあると思いますし、自分も相手の言葉によって傷ついてしまう事も度々あると思っています。時には、自分の発した言葉に後悔することも度々ありました。

　ここでは、人との会話に対して「益」「無益」の事を言っていますが、会話の目的は、人との接触、すなわち交際にあると思っています。

　少し話が大げさになりますが、現在の人類と言う存在、ホモサピエンスが生き残って来た原因を探ると、人が仲間を作り、組織を作り、村を構成させ、一国を成した事にあると思っています。

　グループを構成する生物は、人類以外にも沢山います。しかしなぜ人類が地球上で君臨していられるかを考えた時、「言葉」の存在なくしては、語れないでしょう。

　言葉は、「益」「無益」に関わらず、人と人との絆を深める一つの有益な道具であると思います。杓子定規に、損得だけを考えて話をする分けでは無いと思っています。

　井戸端会議や、女子会、あるいは、飲み会やちょっと一杯などもその類でしょう。憂さ晴らしや、気持ちの整理、時には情報の交換もあると思います。その時、人は為になるからとその集団に入るとは思えません。

　仲間意識が、人間には大切な要素だと思います。孤高の人は、孤高ですから少人数で事足ります。

　無駄は必ずしも無駄ではないと思っています。

　ただ、自己中心的な考えで言うと、この段のとおり、出来れば無駄話に付き合いたくはありません。もちろん、この中には、失言をしないため、と言う事もあります。

　できれば、たわいもない話を、何の躊躇もなくしたい気持ちはあります。その方が絆が強くなると思うからです。

　例えば、今は行く相手がいない事と、経済的な理由から、ゴルフから遠ざかっていますが、ゴルフなどは、考えて見れば、一害あって利益なしと言えなくもありません。しかし、人と仲良くなるのに非常に有意義な一日を過ごす事にもなります。 朝早くから、一日ずっと共に行動するのですから。まして、最後には裸の付き合いも出来ます。

　当然、仲良くなる素地があれば、きっと絆ができるでしょう。もちろん、中には、二度と一緒にゴルフをしたくない人にも巡り合う事もあります。

　と、言う事は、その人の好い所、悪い所を見る機会に巡り合えると言う事かも知れません。

　先ほど、自己中心的、と書きましたが、世の中には色々な人がいますから自己中心的にならざるを得ない時もあります。それでも、たわいもない話をする相手に巡り合いたいと思います。

　できれば、つまらない、愚にも付かない話をしていても、飽きない相手はいると思います。そんな相手は、きっと利害関係もなく、気の合う仲間と言えるでしょう。

　そんな友人が沢山いれば良いですね。