中学校で習う漢字三体字典 Part38

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 中学校の三年間で習う、1110文字の内の5つの漢字を書いています。漢字は2020年度施行の学習指導要領に対応しています。

 表示は左端が対象漢字、続いてカタカナは音読み、平仮名は訓読み、画数、部首の順です。そして、ことわざ・故事・文章などから一つを選んでその漢字の使われ方を示す事にしました。

 ちなみに、文部科学省では学年ごとに習う漢字は、1学年250字程度から300字程度、2学年300字程度から350字程度、3学年では、その他の常用漢字(小学校で習う漢字1026文字以外の常用漢字1110文字の大体)と学年ごとに決まっていないようです。

186. [][キツ][画数:12画][部首:口]

茶去きっさこ

 「師問新到、曾到此間麼。曰、曾到。師曰、喫茶去。又問僧。僧曰、不曾到。師曰、喫茶去。後院主問曰、爲甚麼曾到也云喫茶去、不曾到也云喫茶去。師召院主。主應喏。師曰、喫茶去。」
 師新到しんとうに問とう、かつかんいたるや。いわく、かついたる。いわく、喫茶去きっさこ。又僧に問う。僧曰く、かつて到らず。師曰く、喫茶去。後、院主、問うて曰く、甚麼為なんとししてか、曾到るにもまた喫茶去と云い、曾到らざるにも也喫茶去と云いし。師、院主と召す。主、応喏おうだくす。師曰く、喫茶去。
 現代風に書くと、
趙州:初めてきた僧に尋ねた。「前に来たことがありますか」。
 僧:「前に来たことがあります」。
趙州:「まあ、お茶でもおあがり」。
また別の僧が訪ねてきた。趙州は同じ事を尋ねた。
 僧:「前には来たことがありません」。
趙州:「まあ、お茶でもおあがり」。
後で院主が、初めての僧にも、前に来た事のある僧にも、「まあお茶でも」と言ったのはなぜですかと趙州に尋ねた
趙州:質問に答えず「院主さん」
 院主:「はい」
趙州:「まあお茶でも」
 そんなやり取りです。「まあお茶でも」と書きましたが「まあ一服」と同じです。
 この「まあ一服」が「喫茶去」です。
 この話は、禅に興味のある頃に知りました。神髄とも言うべきやり取りですから、私などが説明しない方が良いと思います。
 ただ、我々は何故生きているのか、なぜここに居るのかに対する、理屈ではない答えだと思います。
 ちなみに、趙州と言うのは、中国禅の大巨匠で趙州従[言念]じょうしゅう じゅうしん禅師の事で、多くの禅問答を残した事でも知られています。

楷書 行書 草書

187. [][キツ][つ-める][つ-まる][つ-む][画数:13画][部首:言]

『理めより重め』

 これは営業的な言葉ですね。理詰めで説得するより、ご馳走でもてなす方が、相手を懐柔できるとでも言うのでしょうか。
 確かにドラマなどを見ていると、料亭で接待なんて場面をよく見ます。私も何度かそんな接待を受けた事もありました。
 しかし、そんな事で人の気持ちが変わらないと思うのですが。
 そういえば、お礼と言って大金を車の中で押し付けられた事がありました。その時はある会社の社員でしたから、丁重に断りました。
 もし自分が経営している会社であれば、お礼ですから受け取ったかも知れません。
 確かに気持ちを現わす場合は、金銭が何よりものを言うと思います。言葉だけでは相手に届かないのも、ビジネスの世界では当然と言えば当然でしょうね。

楷書 行書 草書

188. [][キャク][画数:7画][部首:卩]

『心頭滅すれば火もまた涼し』

 稽古をしている時は、この言葉を思い出して、なるべく熱さ寒さを克服するようにしてきました。
 火はどれだけ精神を統一しても、熱い物は熱いです。火傷もします。しかし、我慢できる限界を少し伸ばせるような気持ちになる事もあります。
 特に寒さなどは、この気持ちが大切で、ふっと気を抜くと風邪を引いたり、身体全身に震えがきたりします。
 多分今後も、何かの時にこの言葉を思い出して、頑張ると思います。
 こんな思い出もあります。冬季合宿で高野山に行ったときの事です。
 部屋を開けっぱなしにして、座禅の時間を作ったのですが、その時は外気が氷点下だったと思います。
 しかし、座禅を始めた時は、凍るような寒さを感じたのですが、40分ほどしてから終了した時に、額にうっすら汗をかいていました。別に冷や汗ではなく、身体も暖かくなっていた事がありました。
 心頭が滅却できたのかどうかは分かりませんが、少なくとも一心にはなれたと思っています。

楷書 行書 草書

189. [][キャク][(キャ)][あし][画数:11画][部首:肉]

下照顧きゃっかしょうこ

 この言葉は、慧能和尚と慧明和尚とのやり取りで出てきた言葉です。慧能和尚と言えば中国禅宗(南宗)の六祖として有名な人です。
 「下照顧きゃっかしょうこ」と言うのは読んで字のごとく、自分の足元をよく見なさい、と言う言葉です。違った言い方をすれば、色々能書きは沢山あるが、悟るのは自分自身であり、この事に気付く事が禅である、と言った人が慧能和尚です。
 現代風に言えば、人の事をとやかく言う暇があれば、まず自分に目を向けなさい、とでも言う事なのかも知れません。
 何年か前から、結局は自分自身しか変える事が出来ない事が解かったような気がしています。過去も変えられないし、未来もまだ決まっていないので変えようがありません。家族の生き方を変える事も出来ませんし、一番身近な妻の心も変えられません。
 だいたい自分以外の者を変えようと思う方が、不遜な考えですね。
 自分自身も希望は持てても、過ぎ去った事など変えようもありません。
 ですが自分の事は自分で方向を決める事が出来ると思っています。それが結局自分を見つめ、自分を頼りに生きていく事になるのではないかと思います。

楷書 行書 草書

190. [][ギャク][しいた-げる][画数:9画][部首:虍]

邪知暴じゃちぼうぎゃく

 世の中はどうなっているのでしょう。生まれた時から乱暴で悪知恵が働き、まわりの人に迷惑をかける、そんな人がいます。
 私の身近にもそんな人がいました。私に対しては優しくていい人でしたが、他の人に対してはこの言葉どおりの悪名を残して、若くしてこの世を去りました。
 何かが彼の人生を狂わせたのでしょう。私にはわかりません。

楷書 行書 草書
覚 書

 現在中学生編として、2020年度施行の学習指導要領に対応した漢字を、楷書・行書・草書と三体の文字を毛筆で書いていますが、初めに部首と書いていますが、通常呼ばれている読み方ではないと思われたと思います。

 そこで、一般ではどんな読み方をされているのか一覧にしてみました。

 今回は、中学校三年間で習う文字の186.~190.の部首を取り上げていますが、日本では部首の正式な名称は決まってないようです。辞書によって統一されていないのが現状です。

部首 部首名称 (読み方) 部首通称

  1. 【喫】口部(こうぶ)・くち・くちへん
  2. 【詰】言部(げんぶ)・ことば・ゲン・ごんべん
  3. 【却】卩部(せつぶ)・ふしづくり・まげわりふ・わりふ
  4. 【脚】肉部(にくぶ)・ニク・にくづき
  5. 【虐】虍部(こぶ)・とらかんむり・とらがしら

 ・・・・つづく。

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