『礼と節』を表現してみよう。 Part-27 4. 『礼節』として伝えられている作法-----【同席の仕方】

『礼節の作法』目次
1.礼の仕方  座礼  立礼
2.食事の仕方   和食  洋食
3. 座席の順序
4.ビジネスマナー  名刺  時間  文書  続文書   続続文書
5. 参列の仕方
. しつけ
7. 和室での礼儀
8. 洋室での礼儀
9.同席の仕方
10.気配り
11.立てるという事
 同席するというのは、その同席する人との関係が重要になってきます。

 例えば同じ会社の人に随行すると言う時、この場合一緒に行くのは上司またはお客様です。同行と言えば、同僚なのか部下なのかは分かりません。取りあえず、目的の場所に複数で行くことになります。

 そして目的の場所が座る席の場合には、同席する事になります。通常はこのように座る事を意味しますが、場合によって「同席」と言う言葉は、地位について言う事もあります。

 今回の「同席」は、同じ部屋で一緒に座る時のマナーについて考えて見ました。

 同席する理由が商談の場合では、必ず一緒に行く人と役割分担を決め、打ち合わせを入念にしておく必要があります。
 目的は商談を成功させるためにあるのですから、相手と議論する必要はありません。まして討論に勝っても仕方ありません。その場の雰囲気を壊してしまうよな言動は慎まなければなりません。

 何度もこのような経験はしてきましたが、その度に緊張しました。真剣勝負です。
 特に上司と同席する場合には、上司を差し置いての言葉は厳禁です。相手に対しての態度も、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の通り、いきすぎて卑屈な態度は良くありません。余計なお世辞も差し控えましょう。もちろん、相手より低姿勢での対応は、当然心がけなければなりません。

 一人の場合でも、同席という状況は同じです。相手がいますから、今度は自分が交渉の鍵を握る事になり、責任も重大になります。上司がいる場合は話を進めるより、上司を補佐する役目が主な役目になりますが、一人の場合は、補佐したりフォローする人がいません。仕事熱心でやる気のある人ほど、結果を急ぎ過ぎる場合があります。自重すべき事を心得ておけば良いでしょう。

 同席する場合に経験した事は、他にもあります。謝りに行く場合です。上司が主導権を握って謝ってくれれば良いのですが、謝る事に慣れていない上司もいます。その時は、出しゃばっても、相手にこちらの非を詫びる事が必要です。問題は、上司より会社の謝辞が相手に通じれば良いのですから。

 逆に相手に対してクレームをつける場合にも、問題はあります。クレームですから、相手が納得して改善してもらわなければ意味がありません。ただクレームを付けて、相手が納得しないまま賠償してもらっても、いわゆるクレーマーか、脅迫になってしまいます。
 こんな時には、理論武装が必要です。相手が悪い事を心から認めさせなければなりません。そして、落としどころを見つける事が大切です。

 相手と争ったり議論することは、ビジネスの世界では避けたいのですが、相手が法的な手続きを取ろうとした時などは、代理人として相手が弁護士の場合があります。これは、やはり争いです。勝たなければなりませんから、スポットが当たっている部分の法律は頭に入れておかなければなりません。

 私の人生を振り返ってみますと、何度も弁護士と話し合う事がありました。長い時には、2年間、あしげく弁護士事務所に通った事もありました。これは、私自身の為では無く、代理人として交渉にあたりました。話しが和解の方向に進むまでに1年以上も費やしました。この時、相手の弁護士は、私の事を弁護士だと誤解していました。
 しかし、私は理論武装はしましたが、「法律は両刃」という事を常に頭の隅において交渉していましたから、法律を盾に議論した事はありません。法律は持ち出した方が不利になる場合もあるのです。知っていて使わない事が必要な時があると思っています。結局、落としどころを見つけて和解になりましたが、8割がた、こちらに有利な結果に導く事ができました。相手の弁護士事務所から、引越しするまで5、6年間はお中元お歳暮が届いていました。

 また、絶対に引く事の出来ない交渉もありました。相手の要求は確か1千万円を超えていたと記憶しています。それを一時間程度の話し合いで、100万円まで値引きした事もありました。こんなことは稀な事で、何度も出来る事でもありません。

 こういった交渉事は経験が必要です。駆け引きが要りますが、私は空手の経験から身に付けた感覚だと思っています。

 私はそんな経験から、商談や交渉事に必要なのは、相手を怒らせないマナーを守る事が基本にあると思います。でなければ、同じテーブルに着く事ができません。同じテーブルに着けたら、後は勝つ事ではなく、如何にして終結させるかを考える事です。ようするに「落としどころ」を見つけるのです。これは、相手を脅しても、威張っても解決の糸口にはなりません。十七条憲法にもある通り、話し合いができる環境を生み出す事が大切だと思っています。

 同席と言うと何も商談や交渉だけではありません。一緒に食事する事も相手との同席になります。

 私が気を付けていた事は、相手にご馳走になる時、相手が注文するものに随う事が優先順位の1番目です。どうしても好き嫌いがあって随えない場合は、その物より少し価格の低い物を注文します。しかし、余り値段に開きがあってもいけないと思っています。ご馳走になるのですから。

 これはテーブルマナーの一つですが、同席して食事を共にする場合のマナーとしては色々ありますが、私が一番気にしていたのは、食べる速度です。絶対に相手より早く終わらないようにしました。しかし、遅くては尚いけません。では、どうすれば良いかと言いますと、相手が終わると間髪を入れず、しかもさりげなく終われるように、ある程度の段階から準備するのです。
 同席して食事をすると言うのは、そういう物だと心得ておいた方が良いと思います。

 私が「いいのかな?」と思ったのは、先輩がご馳走してくれるからと、お腹いっぱい高価なものを注文し、お酒をたらふく飲んで、ご馳走さまとご満悦の後輩です。確かに先輩としてはうれしい人がいるかも知れません。それでも私は、『礼節』に適うとは思いません。