空手道における型について【4】
平安二段 1~12

 

 文章の青字で記述したものは、現在、日本空手道髓心会で行っている方法です。しかし、これも全日本空手道連盟の指定の方法がありますので、これに従って練習しているのが実情です。これについては、記述していません。
 なお、緑字で記述したものは、原点に戻した方が合理的と思われるところです。

 昭和10年当時まだ立ち方、受け方、突き方の名称が定まっていなかったと思われる記述があります。この場合も現在の方法として、青字で書く事にします。現代文にしても意味が分かりにくい部分については、赤字で追記するようにしています。同じく、写真(『空手道教範』にある)を参照の部分については、赤字文章で分かるように追記しています。『空手道教範』に掲載の写真は著作権の関係もあると思いますので、載せていません。
〔ページを遡る煩わしさを避けるため、説明部分は、前回までと重複して記載しています。

 

平安二段へいあんにだん-1~12

 従来平安初段(ピンアン初段)と称していたものである。全部で二六挙動、約一分間にて完了する。号令及び礼、用意の注意については、平安初段と同じ、演武線は工字形で、初段と同じ。

1.左第一線上に左足を踏出すと同時に(右足そのまま、後屈)両拳を写真のようにあげる。上体は前に向き、顔は左向。
(注)左側面よりの顔面攻撃を左手首にて受け、右手に頭上で覆いながら次の攻撃に移ろうとする姿勢。
『写真で見るように、左側が「空手道教範」を模写しているものですが、右側の写真と体の向きが若干違うのと、立ち方もそれに伴って現在の後屈立になっています。「空手道教範」の方は完全な半身(前足と両肩、両腰が一直線)で、髓心会で行われているものは、前足に対して腰、肩の向きも約45度開いた状態にしています。』

2.足はそのまま、左拳を右肩前に引くと共に、右手は半円を描く心持で横から大きく打込む、上体も左向に捻じる。
(注)左手にて相手を引寄せて右手で横から打ち込む心持3.足はそのまま、左拳(手甲下)を水平に左方に突出すと同時に右拳は右脇腹に引付ける。

3.足はそのまま、左拳(手甲下)を水平に左方に突出すと
同時に右拳は右脇腹に引付ける。
(注)右手にて打込むと同時に、間髪をいれず、続いて左拳にて突く。

4.第一線右方を振向きざま(足の位置はそのままで、右足を伸ばし、左足屈する)右拳を右肩前に肘を曲げて構え(手甲後)左拳は頭上に構へる(手甲は額より約5cm)。即ち1.と正反対の姿勢。
『この場合は、頭上にある拳は、額と手の甲の間を拳一個分としています。』
この額の上の拳の位置は、特に原点に戻す必要は無いと考えますが、正にその手で、攻撃を加えるための構えである事を、認識しておくべきだと思います。1.も同様です。

5.足はそのまま、右拳を左肩前に引くと同時に、左拳を大きく横から打込む2.と反対の動作。

6.足はそのまま、右拳を水平に伸ばすと同時に、左拳左脇腹に引く。3.と反対動作である。

7.左足を元の(用意の姿勢の時の)位置に引いて後方を振向くと同時に、右足裏を左膝頭の前にあげ、左拳(そのまま)の上に右拳を重ねる(手甲外)。
『左足を半歩前にする事によって元の位置に戻しています。』
『この場合半歩と変える必要はなく、用意の元の左足の位置に戻す方法で良いと思います。この場合は理論的なものではありません。』

8.左足にて立ったまま、右裏拳にて敵の顔面を打つと同時に、右足刀(小指側)にて金的を蹴る心持。手足共に、攻撃すると同時に引く様に。
(注)7.8.は熟練したら一挙動とする。6.の姿勢の時に、敵が後方から襲いかかろうとする気配を察して、振向き様手足同時に攻撃した意味である。
『蹴りは現在の横蹴りではなく、足刀で金的を蹴る動きです。身体は、やや蹴る方向を向いています。』
『現在は、足刀で蹴る方法が、横蹴りに定着していますので、中段横蹴りと上段裏拳に変わっています。この裏拳は相手の突きを打つ動作として型を行っています。』『現在は、中段横蹴りを蹴放し、あるいは蹴込みのいずれでも良いようになっています。』
『中段横蹴込みは中段横蹴放しに、戻す方が、後ろからの攻撃には、対処しやすいと考えます。』
この部分は、松濤館流としては独自の方法として定着していますので、原点に戻さず、発展と捉えるべきでしょう。
横蹴りの足刀部分は、右側の写真のように水平面から踵がやや上、指側がやや下に向くよう足刀部分を返します。

9.蹴放した足を第一線の後方に下ろすと同時に、前方(第二線の方)に向って後屈、手刀受。平安初段19.22.参照。

10.第二線上に右足を踏出しながら左足後屈、手刀受。平安初段20.21.参照。

11.第二線上に、左足を踏出しながら(後屈)手刀受、9.と同じ。平安初段19.22.参照。

12.第二線上に右足一歩前進(両膝伸ばしたまま立つ)しながら、右四本貫手を以て中段突き(手甲右方)すると同時に、左手を甲が右腕下を滑るように、右脇下に引く。
(注)手足の動作を一致させて、極まる瞬間「エイ」と気合を掛ける。相手の突いて来る手首を、左掌にて押えて引込みながら、貫手にて水月を攻撃する気持ち。
『現在、この部分の立ち方は、前屈立にしています。写真右参照。』
『相手の攻撃に対して、入り身で受けて攻撃していますので、原点に戻して、基立ち、あるいはレの字立が合理的と思います。』

 次回は、平安二段後半を掲載します。

【参考文献】
・富名腰義珍(1930)『空手道教範』 廣文堂書店.
・富名腰義珍(1922-1994)『琉球拳法 唐手 復刻版』 緑林堂書店.
・Gichin Funakoshi translated by Tsutomu Ohshima『KARATE-Do KyoHAN』KODANSHA INTERNATIONAL.