『不動智神妙録』から学ぶ(Part 9)
「水上打二胡蘆子一捻着即転」

 さて、今日は「不動智神妙録」の九番目の項目にある、水上打胡蘆子捻着即転を紹介しながら、読み解いて行くことにしましょう。

  • 水上打胡蘆子捻着即転
      胡蘆子を捺着するとは、手を以って押すなり。瓢を水へ投げて押せば、ひよつと脇へ退き。何としても一所に止らぬものなり。 至りたる人の心は、卒度も物に止まらぬ事なり。水の上の瓢を押すが如くなり。
    【出典】池田諭(1975)『不動智神妙録』, p.66.-p.67.

    【読み解き】
     よく、掴みどころのない人と言います。そういう事でもないと思いますが、昔、こんな話を聞いた事があります。
     和尚さんと小坊主が歩いている時、うなぎのかば焼きの匂いがしました。和尚さんが「うまそうだ」と言いました。ほんの少し間を置いて、小坊主が、「和尚さんでも心を惹かれますか」というと、和尚さんが「おまえはまだ鼻先にそんな物をぶら下げているのか」といったと言う話です。
     学生時代の記憶ですから、話を脚色しているかも知れません。この話にふと合点の行くところがあり、今でも覚えています。
     歳をとると、興味と言うものが薄れていくように思っています。それでも、色々な事に興味を持つ事も必要かな、とも思います。ただ、うなぎの話のように、いつまでも引きずらない事が大切であると思っています。

    【参考文献】
     ・池田諭(1970-1999)『不動智神妙録』 徳間書店.