『礼と節』を徹底解剖 Part-12

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 サラリーマンに必要な事は、『報・連・相』(ほうれんそう)と習ったことがあると思います。組織で仕事をするには、仲間や上司のバックアップが無ければ成り立ちません。自分が良いと思っても、組織的には悪い事もあります。ですから、現在の状況を報告したり、これから何をするか連絡したり、これからしようと思う事を相談したりする必要があります。
 この『報・連・相』がうまく行われない組織は、組織といえる働きが出来ません。
 中には、組織でありながら、個人のスタンドプレーで成り立っている事も、ままあります。しかし、それは組織ではなく、集合体です。集合体の場合は、個々の案件に対して『報・連・相』をしなくても成り立ちます。それでも、集合体を解体するような事案に対しては、やはり『報・連・相』が役立ちます。

 この『報・連・相』にも、TPOという方法が介在しないと、うまく事が運びません。

 前回同様原文は、下記のバーをクリックすると見る事が出来ます。

『十七条憲法 原文』
第一条 一曰。以和為貴。無忤為宗。人皆有黨。亦少達者。是以或不順君父。乍違于隣里。然上和下睦。諧於論事。則事理自通。何事不成。
第二条 二曰。篤敬三寳。三寳者仏法僧也。則四生之終帰。萬国之極宗。何世何人非貴是法。人鮮尤悪。能教従之。其不帰三寳。何以直枉。
第三 三曰。承詔必謹。君則天之。臣則地之。天覆地載。四時順行。万氣得通。地欲覆天。則致壊耳。是以君言臣承。上行下靡。故承詔必慎。不謹自敗。
第四条 四曰。群卿百寮。以礼為本。其治民之本。要在乎礼。上不礼而下非齊。下無礼以必有罪。是以群臣有礼。位次不乱。百姓有礼。国家自治。
第五条 五曰。絶餮棄欲。明辯訴訟。其百姓之訴。一日千事。一日尚尓。况乎累歳須治訟者。得利為常。見賄聴 。便有財之訟如石投水。乏者之訴似水投石。是以貧民則不知所由。臣道亦於焉闕。
第六条 六曰。懲悪勧善。古之良典。是以无匿人善。見悪必匡。其諂詐者。則為覆国家之利器。為絶人民之鋒釼。亦侫媚者対上則好説下過。逢下則誹謗上失其如此人皆无忠於君。无仁於民。是大乱之本也。
第七条 七曰。人各有任掌。宜不濫。其賢哲任官。頌音則起。 者有官。禍乱則繁。世少生知。尅念作聖。事無大少。得人必治。時無急緩。遇賢自寛。因此国家永久。社稷勿危。故古聖王。為官以求人。為人不求官。
第八条 八曰。群卿百寮。早朝晏退。公事靡 。終日難盡。是以遅朝。不逮于急。早退必事不盡。
第九条 九曰。信是義本。毎事有信。其善悪成敗。要在于信。群臣共信。何事不成。群臣无信。万事悉敗。
十条 十曰。絶忿棄瞋。不怒人違。人皆有心。心各有執。彼是則我非。我是則彼非。我必非聖。彼必非愚。共是凡夫耳。是非之理能可定。相共賢愚。如鐶无端。是以彼人雖瞋。還恐我失。我獨雖得。従衆同擧。
第十一条 十一曰。明察功過。罰賞必當。日者賞不在功。罰不在罪。執事群卿。宜明賞罰。
第十二条 十二曰。国司国造。勿斂百姓。国非二君。民無兩主。率土兆民。以王為主。所任官司。皆是王臣。何敢與公。賦斂百姓。
第十三条 十三曰。諸任官者。同知職掌。或病或使。有闕於事。然得知之日。和如曾識。其非以與聞。勿防公務。
第十四条 十四曰。群臣百寮無有嫉妬。我既嫉人人亦嫉我。嫉妬之患不知其極。所以智勝於己則不悦。才優於己則嫉妬。是以五百之後。乃今遇賢。千載以難待一聖。其不得賢聖。何以治国。
第十五条 十五曰。背私向公。是臣之道矣。凡人有私必有恨。有憾必非同。非同則以私妨公。憾起則違制害法。故初章云。上下和諧。其亦是情歟。
第十六条 十六曰。使民以時。古之良典。故冬月有間。以可使民。従春至秋。農桑之節。不可使民。其不農何食。不桑何服。
第十七条 十七曰。夫事不可独断。必與衆宜論。少事是輕。不可必衆。唯逮論大事。若疑有失。故與衆相辨。辞則得理。
[出典]金治勇(1986)『聖徳太子のこころ』大蔵出版.

 現代文を要約したものを下記に示してあります。バーをクリックすると見る事が出来ます。
『十七条憲法 現代文要約』
1.和を以て貴しとなす。という、有名な言葉を一番最初書いています。
2.仏・法・僧を信奉しなさい
3.王(天皇)の命令に、謹んで服従しなければ、国家の存亡にかかわる。
4.上の者が礼を遵守しなければ、下の秩序はみだれ、下の者が無礼であれば罪人を作る。
5.法を行う者は、接待や供与を受けず、厳正に審判すること。
6.面従腹背の輩は、国家を滅ぼす。
7.権限の乱用は国家の存続をおびやかす。
8.公務につく者は、早く出勤し、遅く退出する。
9.真心は人の道の根本である。真心をもって仕事をすること。
10.人間は賢愚を同時に備えている。耳輪に端がないのと同じである。自分がすべて正しいと言う考えを持たない事。
11.信賞必罰の励行。
12.税金は重複して取ってはならない。
13.職務に対しては熟知し、公務を停滞させてはいけない。
14.嫉妬の禁止。
15.私心を捨てて公務にあたる事。
16.人民を使役する時は、時期、環境を考えてする。
17.重大な事柄を判断する時は、必ず衆知を集め議論したうえで決める事。

 本日のテーマは、『十七条憲法』第十六条です。
 漢文では『使民以時 古之良典 故冬月有間 以可使民 従春至秋 農桑之節 不可使民 其不農何食 不桑何服

 では、読み下して見ましょう。
 『民を使う時を以てするは 古の之良典なり。 冬の月は間が有る故 以て民を使う可 春従秋に至るまで 農桑之節 民を使う可不 其れ農せ不んば何を食わん 桑とら不何をか服さん』

 現代文に変える前に、言葉を少し理解しておきましょう。
 「良典」:良い教え、「従」:から、「桑」:くわ、「節」:時期、をそれぞれの意味し、桑の葉は蚕の飼料になるので、「服」は着る事を表している。

 では、この事を踏まえて、現代文として見ましょう。
 『民を使うのは時節を考えるよう、古くから言い伝えられている。冬は昼間が短く夜が長いので、公務に就かせる、春から秋にかけては、農作物や桑畑の繁忙期だから、民を使ってはならない。農作業しないで何を食べようというのか、また桑の葉を育て蚕から絹を取らないで何を着ようというのか』

 ここでは、今で言うTPO、すなわち、 Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合。Opportunityと使われることもある)を考えて、民を使えという事ですが、今では、仕事を頼む場合は、TPOを考えて頼みなさい、という事だと思います。

 これが仕事の依頼だけではなく、人と話をする時でもTPOを考えないと『礼節』を欠く事になります。もちろん時間も関係しますし、場所柄を弁える事も必要です。そして、その時言って良い事か、悪い事かも判断しなければ、相手に対して『礼節』を欠く事になります。

 『礼節』を欠く事は、何も自分が恥をかくだけではありません。相手に恥をかかせる場合もあります。また、知らない間に、相手を貶める事にもつながります。

 この事も失敗しないと覚えられない事です。しかし、一つの失敗から一つの『礼節』を知る分けではありません。一つの失敗から関連した幾つもの事柄に対して、こんな事は、この場合は、あるいは、この時には、口に出すべきではないと知り、勉強する事ができると思います。

 「一を聞いて十を知る」と言う諺がありますが、少しの情報から全体を知ると言う意味で使われています。もともと論語の中にでてくる言葉ですが、そこで使われているのは、謙虚に自分を低く置いて、人を高く評価する言葉として使われているみたいです。自分の事を言うと、単なる自慢になってしまいます。これも、TPOを弁えた言葉の使い方でしょう。

  聖徳太子が1500年前に書かれたとみられる、十七条憲法を、漢文、読み下し、現代文と解明してきました。ここでは、『礼節』に関りがあると思われるものだけ、抜粋しています。十七条の内、十条を取り上げました。その他の条も現代に当てはめて考えますと、大変重要な事が書かれています。興味のある人は、『原文』を掲載していますので、読み解いてみてはどうでしょう。

 さて、今日で十七条憲法の徹底解剖と題した投稿もすべて終了しました。『礼節』に関係すると思われるものを取り上げ解明しても、一日一条ですから、もう初めの条の印象が薄くなってきています。私が、です。念のため。
 ですから、明日は、もう一度、『礼節』と関わり合いのあると思われる条をまとめてみようと思っています。

 明日と書きましたが、これは、結構手間取る作業なので、次回と言う事にして置きます。ご期待下さい。

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