お習字から書道へ Section 16

スポンサーリンク

 今回は横画の収筆(終筆)について、書き方のポイントを書いて見ました。これも前回同様、楷書を念頭に置いていますので、行書や草書の筆使いではありません。
  
 今回も、私が書いた、「青」と「百」の横画を見本にしました。この形もそれぞれに形が若干違っていますので、観察のポイントとなります。

 楷書の書体  

 「篆書」「隷書」「行書」「草書」「楷書」の五つの書体がある事は、前回に紹介しました。

 では、『楷書』の特徴を『入門毎日書道講座1』(青山杉雨・村上三島編)から引用してみましょう。

 『字形はやや扁平ですが、他の字の場合を参酌するとまず正方形と見てよいでしょう。問題はバランスのとり方で、隷書と見比べると解ると思いますが、字画の歪みがハッキリと出ているのに気がつかれるでしょう。縦画は垂直ですが、横の上辺が右上がりです。この上辺が右上がりということが、前の篆、隷と非常にちがうところで、書法もこの右上がりという基準から出発しているのです。』

 この文章から、楷書は右上がりに書けば良いのだと思います。そして、ここで見本にしている「百」も「青」も若干右上がりに書けています。

 しかし、正方形と言うのは、ちょっと違う気持ちがします。「百」は逆三角形、「青」は菱形に見えなくもありません。

 私は、活字の場合は、正方形の中に文字を作っていますので、正方形と言えますが、楷書の場合は、文字によって縦長の文字や横長の文字、あるいは、ここで言う逆三角形や菱形など多岐に渡っていると理解しています。

 
  今回「青」「百」の文字を掲載しましたが、これも通信教育の上級コースの第一課題である、半紙に二列に書く「青雲百景」の「青」と「百」を取り出して、横画の見本にしました。赤丸で囲まれた部分が、横画の終筆になります。
 この「三」の文字も、通信教育を始めて初回に提出した、氏名を3列書く課題の「三」の文字を取り出しました。そして赤丸に示した部分が、横画の終筆です。書くたびに少しづつ変化があります。これが手書きの良いところなのでしょうか。確かに機械的な冷たさは感じません。

 横画収筆(終筆)のポイント  

 筆、すなわち穂先と腹が45度左に傾いた状態で、右側に送筆されて筆が運ばれてきます。
 「収筆(終筆)」と言うのは、私は筆をまとめると理解しています。これは私の感覚ですから、正しいかどうかは分かりません。しかし、私も上手く書けない時は、途中で何度も硯の丘と縁で筆を整える事があります。二文字三文字と筆を直さずに書く事が出来れば良いのですが。

 しかし、収筆(終筆)が正しく行えれば、筆を整える事も少なく、途中で筆が割れる事も無いと考えて、出来るだけ、終筆で形はもちろんの事、筆も整えるよう心掛けています。筆が割れるのは他に原因があると思いますが、これはまたの機会に私が得た方法を書いてみます。

 その為には、送筆の段階で、穂先が文字の上に無ければなりません。そして、筆の腹が右斜め下を向いている必要があります。そのまま筆を上げると、入筆した時の筆の形になると良い状態で、筆が使われたことになります。

 終筆の直前まで筆を運んだら、筆の腹を紙面から浮かせます。次に穂先を若干右斜め上にずらします。
 そして、筆の左面を紙面に押し付けるようにしてS字型を作ります。ここで、左面から筆の腹を付けるようにして、穂先を中心にすこし左回転させます。何度も言いますが、軸を回すのではなく、筆の背と腹を結んだ線を回します。
 最後に穂先を起筆の方向に少し引き上げながら戻して、終筆の完成です。

 言葉にすると、理屈っぽくて、なんだか難しそうですが、一度その通りに筆を動かして、この部分だけ自然に出来るようにする事が、点画を上手く表現できる方法だと思います。

 

 起筆・収筆 始筆・終筆  

 このブログでは、起筆と終筆と言う言葉を使っていますが、江守賢治先生の記述では、次のように書かれています。 

 『起筆と収筆とは昔から使われてきた用語であるが、始筆と終筆は戦後小学校で使われ始めた用語である。  起筆や収筆というのはむずかしいというので新しい用語を作ったと聞いているが、字がむずかしいのか、語の内容がむずかしいのか、私にはわからない。  単に、やさしい用語にするためならば、始筆・送筆・終筆とはいわないで、横画や縦画の「始め・途中・終わり」とすればよかったのではないか。転折を「折れ」といっているのと同じようにである。  収筆と終筆とは同じではない。一点一画が一つ一つで終わるという考えで書くと、字全体に脈絡がなくなる。収の字には「おさめる」の意味があって、そこでいったん筆をまとめて次の画に移っていくという意味で、収筆というのである。』(出典:江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.

 このブログでは、起筆・送筆・終筆と書いてきましたが、これからは、『起筆・運筆・収筆』と改めたいと思います。

 なお、東京書道教育会の資料では、始筆(起筆)・送筆(運筆)・終筆(収筆)となっています。ちなみに、江守賢治先生も東京書道教育会の『用具・用材について』と言うテーマで執筆されています。 

 

【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です