お習字から書道へ Section 21

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 今回は、「点」と東京書道教育会では呼称していますが、書道界で統一されている様子はありません。

 そこで、どういう文字に「点」と言う部分があるかを、書いて見ました。

 しかし、点がある文字は、点を筆頭に、永字八方の永、主人、丹下作善、熱気球、米朝、滝廉太郎、神代、団体、博士、成功、などなど、色々ありますので、ここは、「九成宮醴泉銘きゅうせいぐうれいせんめい」の文字を臨書してみる事にしました。
 この臨書した文字は、『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘きゅうせいぐうれいせんめい佘雪曼しゃせつまん編を手本としましたが、九成宮醴泉銘の文章から集字したものであると推察しています。ですから、「欧陽詢おうようじゅんの九成宮醴泉銘」ではなく、『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』に掲載の「点」の書き方の色々と理解しています。この6文字の意味を私は知りませんし、この漢字は現在の辞書で確かめる事はできません。ただし、書道専門の辞書では引く事ができるのだと思います。

 二つ目の文字も読み取る事も出来ません。しかし、ここでも「点」についての説明がある部分を手本としました。

 いつものように、半紙に書いた文字を写真に撮ったものを、画像処理して右から横に並べてみました。

 画像処理したものに、アルファベットで番号をつけました。赤い丸印が「点」になります。

 

 『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘きゅうせいぐうれいせんめい』には、A:B:平点、C:D:直点、E:F:長点、D:E:上下点、FG:左右点、H:I:散水点(三点水)と言った分類がされています。 

 点のポイント  

 平点(A・B)を書くには、入筆後に直ぐに右に穂先と腹を結んだ角度、これを筆の中心線と仮に言うとしたら、中心線をほんの少し右にずらしながら入筆します。少し筆を縦てて穂先を腹の方に移しながら紙面から上げます。AとBの違いは、右にずらす距離だけです。

 直点(C・D)は、縦画の起筆と同じように入りますが、筆を縦に引く時に穂先を紙面から上げながら収筆します。この距離は書く文字の大きさによりさまざまに変化します。

 長点(E・F)は、「しんにょう」などの「右払い」と途中まで同じですが、収筆は長く伸ばすのではなく、また横画の収筆のようにせず、中心線の腹の部分に穂先を紙面からあげながらまとめます。

 上下点(G・H)の場合、二点目が収筆を止める場合と、はねる場合がある事に注意しています。
 上の点は、名づけるとしたら、左はね点と思えば覚えやすいと思います。入筆後に中心線をずらすことは同じです。そして右斜め下に少し中心線上を移動させ線を引きます。少し押し返し気味(S字形)にして今度は穂先を左斜め下に穂先を揃えながら紙面から上げていきます。
 下の点の止める場合は、最後の収筆の穂先を紙面から上げる向きが入筆の方向になるだけです。
 下の点ではねる場合、ここでは、右にはねていますが、入筆をする時に中心線を左斜め下に少しスライドさせます。S字形を作るように少し紙面を押します。中心線を右斜めにスライドさせながら筆の腹を紙面からあげて、穂先をまとめます。

 左右点(I・J)は、上下点の組み合わせですが、文字によって入筆角度が違います。これは、文字全体のバランスを考えて書く必要があります。
 左の点は、上下点の下側のはねる場合の点で書きます。そして右側の点の一つは、上下点の左はね点と同じです。もう一つの右側の点は、左払いと同じ入筆をします。入筆した筆にS字形の圧力を与え、左斜め下に中心線をずらしながら腹を紙面から上げていき穂先を整えます。左払いと違うのは、斜めの太さが直ぐに細くなっていくところです。

 散水点(三点水)(K・L)の場合は、一番上の点の書き方は、上下点の上の点と同じです。真ん中の点は、収筆を真下に下ろすこと、そして、一番下の点は、上下点の右はねの点と筆運びは同じですが、穂先の向きが次に書く点画に向かう事です。ここで書いている文字の場合は、ほとんど真上にはねると考えて良いでしょう。

 入筆も、この文字の場合は、すこし逆筆に入筆しています。逆筆というのは、穂先を一端下から上に少し上げながら入筆する方法です。

 ここでは、「然」などに見られる、下の四つの点を書いていませんが、これは、ここで書いた(G・H・I)の組み合わせ、あるいは応用と考えてください。

 

 一口メモ 

 書道の稽古の方法では臨書は欠かせないものだと思います。その中でも「九成宮醴泉銘」と言うものがあります。「書道技法講座 楷書 九成宮醴泉銘 唐 欧陽詢おうようじゅん 佘雪曼しゃせつまん編」と言う書籍に「点」についての記載があります。

 『篆書の書き方は、平直なのを基本とし、点は円筆を用いる。隷書では横直のとき、そのほかに波磔はたく(捺)をあわせ用い、点は平筆を用いる。楷書は、篆、隷の変化したものであるが、円筆も平筆もこれに適合しない。そこであらたて側筆を用いるのである(永字八方の第一筆の点を「側」と名づけるが、これはかたよつているという意味である)点を書くには、その形がきびきびしていなくてはならない。・・・・』

 この書籍では、点の種類について、平点・直点・長点・上下点・左右点・散水点(三点水)・横三点・横四点の9種類をあげています。

 東京書道教育会では、特に呼称を付けずに文字で示しています。ただ、散水点(三点水)については、「さんずい」を示し、上の二つの点として、三画目については特に書かれてありません。

 

【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
・佘雪曼編(1969-1990)『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』株式会社二玄社. 

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