お習字から書道へ Section 62

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見方・感じ方が違うのが人間

 空手道の場合、突き蹴り受けの基本であっても、それぞれの会派や流儀によって主張がありますが、書道も同じであると思う事にしました。

 理由は、人は、百人百様と言われる程、見方、考え方、感じ方が違う生き物です。ですから、綺麗と感じる事も人それぞれなのかも知れません。

 指導の方法もそれぞれの団体で違う事も仕方のない事なのかも知れません。

 
 それでも、疑問!?

 それでも、全体が把握できない内は、腑に落ちない点に悩まされる事になります。そこで私が疑問に感じている事を、書いてみる事にします。

 今日は、その内の一つを取り上げて見ましょう。

 半紙に漢字、又は漢字かな交じり文を書く場合、又は、かなや変体仮名を書く場合には、指導を受けている時は、概ね氏名など、書いた人が分かるように左端に書きます。東京書道教育会でも同じように書くのですが、東京書道教育会から送られてきた教材には、半紙に清書して名前を書く場合には、名前を書くスペースを開けて、本文はその分右に寄せるように記載されています。要するによく目にする書道用の下敷きに書かれてあるように。

 しかし、添削は、ことごとく、本文を真ん中(二行の場合は、半紙を四分割して中心を出す)に書き、左端に本文の文字の空いたところに書くよう指示されました。疑問に感じて、メールで質問をしましたが、回答は私の認識が正しいとの返事でした。

 確かに半切などの場合は、教材にも、本文を真ん中に書き、縦の長さの半分くらいの左側に名前を書くよう記載があります。
 私は、合格するために指示通り書き直し再提出して合格しました。しかし、これでは、自分が自信を持って人に指導する事は出来ません。

 残念ながら他の団体の指導方法も知りません。すくなくとも、教材と同一の指摘が必要ではないかと、考えています。

 他にも矛盾点は、幾つかありましたが、又の機会に記載したいと思っています。

 これは、東京書道教育会に対する批判ではなく、今後同じように東京書道教育会で通信教育を受ける人の参考になればと思い、書きました。

 

 さて、今朝も文字を選んで書く事にしましょう。

 今まで通り『楷行草筆順・字体字典』(江守賢治著)から、上手く書けそうな文字と、難しそうだな、と思う文字の二種類の文字を選ぶようにしました。

 前回は、「そうにょう」「にんにょう」を取り上げました。
 文字は、「赴」「起」「越」、「元」「兄」「児」を楷書で、「赴」「起」「越」「元」を書写体で書きました。

 今回は、「きにょう」「はこがまえ」「くにがまえ」を取り上げました。
 文字は、「魂」「魅」「魔」、「匠」、「四」「図」「国」を楷書で、「魂」「魅」「魔」「四」「図」「国」を書写体で書きました。

 毛筆の文字の右側に、いつもちょっとした反省文を載せています。人に添削してもらう場合の講評です。

 これが、文字を上手く書けるようになる一つの要素です。自己評価が客観的に行えるようになれば、それだけ文字を書く時の観察眼になると思っています。

 書いて、眺めて、自分で添削して、講評してみる事も一つの稽古になりますよ。

 

 書きあがってから、もう少しと思うのが常ですが、今回も楷書は少し右に傾いてしまっています。

 書写体の方は、まずまずバランスが取れた字になりました。

 この文字のポイントは三つの部分の結構の仕方にかかっています。真ん中になる部分が左右の部分を支えるようなイメージで書いています。しかし、右の「ム」は、真ん中の部分の一部、枝のように同じ部分のように書いています。
 

 手本をよく鑑賞してから書きましたが、少し「ム」の部分が小さすぎたようにも思います。

 何と言ってもこの文字のポイントは、曲がりからの横画の長さにあると思います。上に乗る「未」が不安定にならないよう支える気持ちで書きました。

 

 「魔」は、手本を参考に角度、各部の大きさを書写しています。難しい文字ですが、バランスはとれたように思っています。

 

 
 「匠」は、四角に書けば良いと思いましたが、もう一工夫いるように感じています。この字に相応しい風格はありません。

 

 
 「四」は、数字の中でも難しく、いつ書いても上手く書けません。この文字は手本がありますので、まずまず書けた方でしょう。

 書写体の方が、しっかり書けたと思います。

 

 
 楷書、書写体とも、良く書けていると自己評価します。ポイントは、四角でも少し左の縦画右の縦画に変化があり、上の横画、下の横画にも工夫が必要だと思います。

 中の部分は、空白をうまく利用して、窮屈にならないよう気を配っています。

 

 
 楷書の「国」は、まずまず書けたと思っています。

 書写体の方は、真ん中の空間を取り過ぎたかも知れません。

 

   

 一口メモ 

 「書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘」(余雪曼著)が、「結体三十六法」と「結構八十四法」を基に九成宮碑文の特殊な結構を参酌して四十四に書き表したものを紹介します。
 今回は、その14回目です。
 【ここで書いてある文字は、九成宮醴泉銘を私が臨書したものです。赤い線は。『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』を参考に入れています。】
  
(29) 重併法
 この重併とは、並ぶと解釈できます。上下に重なり並んだ部分の書き方は、上が小さく下を大きく書きます。

 そして、下の字は、横に同じ部分が並んでいますので、この場合は、左を小さく、右を大きく書きます。

 

 

(30) 重〔敝〕法【文字は本来〔手偏〕です。環境依存のため〔〕で囲みました。】
 これは、じゅうへつ法と読みます。二つの「へつ」が並んでいる場合の書き方です。「へつ」は、「てへんに〔敝〕」と書きます。
 「書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘」(余雪曼著)では、左払いの事を「へつ」と呼称しています。
 そして、一つ目の左払いは長く、二つ目の左払いは短めに丸みをつけて、平行にならないようにする方法です。

【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
・江守賢治(2000)『楷行草筆順・字体字典』株式会社三省堂.
・余雪曼(1968-1990)『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』株式会社二玄社.
・續木湖山(1970)『毛筆書写事典』教育出版株式会社.

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