【五輪書から】何を学ぶか? |
『五輪書』をここまで読まれて、何か釈然としない気持ちになりませんか。
普通は、映画や漫画、吉川文学による宮本武蔵像を想像されると思います。
にもかかわらず、 「五輪書」から学ぶ part-2では、13才に始まって28、29才に至るまでの間に戦った事が記されているにもかかわらず、吉岡一門の名も、佐々木小次郎の名もでてきません。
もちろん、史実と小説を比べてはいけないのですが、諸説、異聞が多いため、 「五輪書」から学ぶ part-1で紹介しました、菊池寛(菊池賞)と直木三十五(直木賞)との間で、名人か否かの問題が発生したのでしょう。
それでも、「五輪書」が今でも読まれ続けている理由があるのだと思います。よく、科学では証明できないものが、本物か偽物かを判断する時に、歴史がこれを淘汰し証明すると言われます。やはり、その内容に秀でたものがあるからでしょう。
今回は、【地之巻】「5.兵法の道士卒たるもの」から学んで見ましょう。
【地之巻】の構成
5. 兵法の道士卒たるもの
6. 此兵法の書五巻に仕立てる事
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7. 此一流二刀と名付る事
8. 兵法二つの字の利を知る事
9. 兵法に武具の利を知ると云事
10. 兵法の拍子の事
11. 地之巻後書
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5.兵法の道士卒たるもの
武士とその家来は、大工の世界を見習う必要がある。
大工でさえ、自分で道具を研き、必要な道具を揃えて専用の箱に入れて、棟梁の指示に従い、造る物に合う道具で、指図どおりの物を、手際よく造る。
これがうまく出来るようになって、その大工は、棟梁になる。
この大工の専門の技術を覚えて、棟梁になるさまは、まさに武士とその家来が学ぶべきところである。
大工の心がけは、常にその道具に不備がないか確認し管理することである。
兵法の道を学ぼうとする者は、この書き記す事柄を、隅々まで熟読し身に付ける事が大切である。
『私見』
余程、大工の技術の高さと、棟梁になるシステムが、武蔵のいう兵法の道を学ぶシステムと合致したものと思われます。
確かに当時の建物は、現在の建築技術に勝るとも劣らないと聞いています。
あのスカイツリーでさえ、五重塔の重心の取り方を参考にしているとの情報もあります。如何に、その技術とその継承方法に卓越したものがあったのか、想像できるものと思います。
大工でさえ、と、士農工商という身分制度上、あえて上からの言葉ではありますが、言いたいことは、今の武士は大工にも劣っている、と言いたいのではないでしょうか。
【参考文献】
・佐藤正英(2009-2011) 『五輪書』ちくま学芸文庫.
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