【五輪書から】何を学ぶか? |
にっちもさっちも、行かない時はあるものです。いわゆる手立てがない、と言う場合です。しかし、すこし距離を置いて見てみると、意外と抜け穴が見えてくるものです。
今日は四手、すなわち四つに組んだ状態から解き放す、と言うのがテーマです。
剣術や空手の場合は、基本的には離れて技を競い合うものです。それが、相撲のように四つに組んだ状態になると言うのは、どんな状態を言っているのでしょうか。果たして相撲の様に組んだ状態なのか、それとも、動けない状態なのか、とりあえず、動けない状態と思っておきましょう。
仕事でも社会生活でも、煮詰まった状態というのは、よくある事です。
ですから、会社でいいアイデアがでなくても、家に帰ってお風呂に入っている時に、「あっ、そうか」と解決策に気が付くことがあります。
水之巻の 喝咄と云事の私見でも書きましたが、一心は良い事ですが、一心不乱になってしまっては、周りが見えません。俯瞰する余裕を持てば、良いアイデアが生まれるかも知れません。
【火之巻】の構成
1. 火之巻 序
2. 場の次第と云事 3. 三つの先と云事 4. 枕をおさゆると云事 5. 渡を越すと云事 6. 景氣を知ると云事 7. けんをふむと云事 8. くづれを知ると云事 9. 敵になると云事 10. 四手をはなすと云事 11. かげをうごかすと云事 12. 影を抑ゆると云事 13. うつらかすと云事 14. むかづかすると云事 15. おびやかすと云事 |
16. まぶるゝと云事
17. かどにさはると云事 18. うろめかすと云事
19. 三つの聲と云事
20. まぎると云事
21. ひしぐと云事
22. 山海の變りと云事
23. 底をぬくと云事
24. あらたになると云事
25. 鼠頭午首と云事
26. 将卒をしると云事
27. 束をはなすと云事
28. いはをの身と云事
29. 火之巻 後書
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10. 四手をはなすと云事
四手を放すと言うのは、敵も自分も、同じように張り合う気持ちになっては、上手く行かない。張り合うようになると思えば、その気持ちを止めて、別の勝つ利を考える。
合戦においても、敵味方が同じように張り合えば、うまくいかない。敵味方とも死傷者が沢山でる。早く張り合う気持ちを止めて、敵が予想しない方法を考えて勝つ事が多い。
又、一対一の戦いでも、同じように張り合っていると思えば、直ぐに気持ちを変えて、敵の態勢を考えて、全く違う方法で、勝ち方を見分ける事が大切である。よく判断する必要がある。
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『私見』
この写真の様に、鍔迫り合いをしているのも、四手の状態、すなわち相撲で言えば、四つに組んでいる状態です。相撲や柔道などは、四つに組むのも技の内で、その状態から如何にして相手を崩していけるかが、勝負の分かれ目でしょう。
空手では、相手と互角の状態で、例えば、後の先(待の先)で相手の攻撃に対処しても、反撃がうまくいかない場合などは、直ぐに相手にこちらの戦術が見えてしまい、同じ事の繰り返しになる場合があります。また、こちらが、先の先(懸の先)で得意とする技で、攻撃を仕掛けても、うまく躱されてしまう場合で、相手も反撃にでる事が出来ない場合には、どちらも、同じやり方で攻撃を繰り返しても、埒があかない事があります。
やはり、四手というのは、ある意味、動くに動けない煮詰まった時の事を言っているのですね。そんな時は、武蔵の言うように、別の方法を考えなければなりません。しかも、相手が予測できない方法で対処しなければ、同じ事になります。
攻撃のパターンは、ある程度得意なものをよく練習していますので、その得意のパターンを多用しがちです。しかし、得意のパターンを、幾つも稽古していれば、引き出しが多くなります。空手で言えば、刻み突き、追い突き、前蹴りなどの連続技をパターンとして反復練習する事です。
しかし、得意技と言われるものを稽古するとき、同じような攻撃のパターンになりがちです。それは、自分にとってやり易いからです。これでは、相手も対処しやすくなりますので、得意技を考える時に、種類の違う方法を用意しておくべきだと思っています。
得意技は、相手の態勢をみて、効果が見込める時だけしか、出さない方法も戦略として考えられます。それぞれ色々な戦術を考えるのが戦いですから、日ごろから戦略をしっかり立てて稽古しておくべきだと思います。
もちろん、仕事の上でも相手と競り合う事がありますが、四つに組んで勝てる見込みがない時は、違う方法で対処してみるのも、大切な方法だと思います。如何に早くその状況を把握できるかに、勝負の鍵はあると思います。
【参考文献】
・神子 侃(1963-1977) 『五輪書』徳間書店.
・佐藤正英(2009-2011) 『五輪書』ちくま学芸文庫.
【参考サイト】
・播磨武蔵研究会の宮本武蔵研究プロジェクト・サイト「宮本武蔵」http://www.geocities.jp/themusasi2g/gorin/g00.html
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