【五輪書から】何を学ぶか? |
この歳になると、子供の頃に遊んだ影踏みなど、なにが面白くて夢中になったのか、忘れてしまいました。よく、箸が転んでもおかしい年頃といいますから、今よりも感情が豊だったのかも知れません。失礼、歳頃の娘さんの事でしたね。
さて、影を踏んでも、何の感覚もありませんし、影を踏んだからと言って、動けなくなる分けでもありません。「五輪書」だけではなく、歴史的な書物を理解する時は、その頃の生活様式が分かっていると、随分読みやすいのでしょうね。
今更ながら、勉強しとけば良かったと、嘆いています。で、今更ですが、漢検トレーニングという無料アプリを寝る前にやっています。随分漢字を書けるようになってきました。まだ、中学生レベルですが。
折角勉強する気になったと思ったのに、夜は、目がかすんで見えにくくなって来ました。
【火之巻】の構成
1. 火之巻 序
2. 場の次第と云事 3. 三つの先と云事 4. 枕をおさゆると云事 5. 渡を越すと云事 6. 景氣を知ると云事 7. けんをふむと云事 8. くづれを知ると云事 9. 敵になると云事 10. 四手をはなすと云事 11. かげをうごかすと云事 12. 影を抑ゆると云事 13. うつらかすと云事 14. むかづかすると云事 15. おびやかすと云事 |
16. まぶるゝと云事
17. かどにさはると云事 18. うろめかすと云事
19. 三つの聲と云事
20. まぎると云事
21. ひしぐと云事
22. 山海の變りと云事
23. 底をぬくと云事
24. あらたになると云事
25. 鼠頭午首と云事
26. 将卒をしると云事
27. 束をはなすと云事
28. いはをの身と云事
29. 火之巻 後書
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12. 影を抑ゆると云事
影を押さえると言うのは、敵の方から仕掛けようとするのが見えた時の事である。合戦の場合は、敵が攻撃をしようとする所を押さえると言って、我方より相手の攻撃を制するため強く出れば、その強さに押されて、敵の心は変わる。我方も強い心から、心機一転して、先に懸かれば勝てる。
一対一の戦いでも、敵が攻撃しようとする強い気持ちがある時、こちらは、その気持ちに勝つ方法を考えて、相手の攻撃を抑止し、その止めた拍子に自分が勝つ利を得て、先に仕掛けるものである。よく工夫すること。
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『私見』
枕をおさゆると云事と、非常に似た精神状態であろうと思います。
僅かな違いを、使われている言葉から、推測してみましょう。「枕をおさゆる」の場合は、「おさゆる」と平仮名を使っていますが、数種の写本(原文)の中では「押ゆる」と「押」という漢字が見られます。今回の場合は「抑ゆる」と漢字を充てています。現代文と昔の言葉に違いがあるかも知れません。したがって、推測の域を出ませんが、現代文では、「押」を使う場合は、物に対して、「抑」の場合は、感情を抑える場合に使います。
このように考えますと、「枕をおさゆる」場合は、敵の刀自体を押さえる。「影を抑ゆる」場合は、刀ではなく気勢を殺ぐのではないかと思います。
また、前回の「かげをうごかす」の場合も「かげ」と平仮名が充てられ、今回は「影」と漢字が使われています。これも、写本により違いがあり、どれが正しいのかは、原文を引用させてもらっている【播磨武蔵研究会】が研究されているので、参考にされれば良いと思います。
私は、空手道を通じて、この『五輪書』を読んでいますので、「かげをうごかす」を「陰」と断定して読み解いて見たいと思います。
これも、現代文を頼りに推測の域を出ませんが、「陰」の場合は、「陰に隠れる」のように、見えないもの、と捉えると、まだ見えない相手の感情や動きを見えるようにする事ではないかと、思います。前回も書きましたが、「ひょうひょうとして、何を考えているか分からない」状態から、分る状態にするという意味に解釈してはどうでしょう。
そして、「影」も、実態は分かりにくい存在ですが、それでも、目には見えます。その「影」は、実体と共にあります。ですから「影」は、相手の感情の動きとして捉えたのではないでしょうか。そうすると、相手の感情の起こりを抑える事になるのではないでしょうか。
断っておきますが、あくまでも、空手道を通じて得た経験から推測しています。武蔵が考えるものとは、違うのかも知れません。しかし、戦いの中では、私が読み解いた現象というのは、体験できる事だと思っています。
【参考文献】
・神子 侃(1963-1977) 『五輪書』徳間書店.
・佐藤正英(2009-2011) 『五輪書』ちくま学芸文庫.
【参考サイト】
・播磨武蔵研究会の宮本武蔵研究プロジェクト・サイト「宮本武蔵」http://www.geocities.jp/themusasi2g/gorin/g00.html
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