|
|
前回まで、中国の李淳と言う人の「結構八十四法」の解説を「一口メモ」として掲載してきました。
しかし、なるほど、と思える部分と、理解できないところ、あるいは、これは「結構」ではなく、点画の筆法ではないか、など疑問点も幾つか見つけました。もちろん、歴史上、書道界では重要な研究であって、私などがとやかく言う事では無い事は、十分分かっています。
ただ、私の頭の中で、このまま放置しておくと、単なる絵に描いた餅に過ぎません。
とりあえず、なるほどと思った部分だけ使う事にしたいと思っています。
もう一つの難問は、どの書風を柱にするかによって、全く「結構法」が変わってしまう事です。
さて、今朝も文字を選んで書く事にします。
この文字を選ぶときには、『楷行草筆順・字体字典』から、上手く書けそうな文字と、難しそうだな、と思う文字の二種類の文字を選ぶようにしています。
前回は、「ひへん」「やへん」を取り上げました。
文字は、「灯」「燃」「燥」、「知」「短」「矯」、を楷書で、「燃」「知」「矯」を書写体で書きました。
今回は、「たにへん」「かねへん」「しょくへん」を取り上げました。
文字は、「谷」、「針」「鈍」「鉄」、「飲」「飼」「養」、を楷書で、「鉄」「養」を書写体で書きました。
常用漢字では「たにへん」は、「谷」しか見つけられませんでした。
文字にも好き嫌いがあって、「谷」は、好きな文字ではありません。理由はバランスが取りにくいと、頭から思っているからです。
今回は、その固定概念を払拭しようと、よく手本を観て、書いて見ました。
やっぱり、上手く書けません。「ひとやね」の開き方が難しいと感じています。
「針」は、上手く書けると思っていましたが、結果は良くありません。
日によって、調子の良い時と、悪い時があるのは、集中力の差かも知れません。ようするに気が乗らない、と言う事です。
「鈍」は「針」と同じ「かねへん」ですが、私が何も見ないで書くと、「かねへん」の最後の画は、右上に払います。しかし、この手本では、収筆をしっかり止めています。書きやすさでは、慣れのせいか、払いの方が文字としてのまとまりがでます。
同じ「かねへん」ですが、手本通りには行きません。「失」の頭が出すぎた感じです。漢字と言うより出てますね。
書写体の方が形が良い気持ちもしますが、これも手本ではもう少し旁の方が立っている感じです。
「飲」は手本を見ずに書くと、こういう感じには仕上がりません。やはりペナントの三角形をイメージすると良い感じに仕上がります。
「飼」と言う文字は、旁の「司」の起筆を「食」の点の延長線上(右上がり)から始めて十分横画を取ってから折れに、そしてはねる方向は「食」の最終画に向かい、その中に小さい横画と口を入れるようにすると、バランスが取れるようです。「司」の一画目がなければ、ペナントの三角形をイメージして書くと良いと思いました。
「養」は、縦長になりますが、少し上の横画の幅を詰めて、左右の払いを工夫して「良」の字を中心から外れないように入れる事を念頭に書いて見ました。
書写体は、少し上の画が大きく書くと、意外とまとまった字になりました。
|
|
|
【参考文献】
・青山杉雨・村上三島(1976-1978)『入門毎日書道講座1』毎日書道講座刊行委員会.
・高塚竹堂(1967-1982)『書道三体字典』株式会社野ばら社.
・関根薫園(1998)『はじめての書道楷書』株式会社岩崎芸術社.
・江守賢治(1995-2016)『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』株師会社日本習字普及協会.
江守賢治(1981-1990)『常用漢字など二千五百字、楷行草総覧』日本放送出版協会.
・江守賢治(2000)『楷行草筆順・字体字典』株式会社三省堂.
・余雪曼(1968-1990)『書道技法講座〈楷書〉九成宮醴泉銘』株式会社二玄社.