【五輪書から】何を学ぶか? |
怯えたり、恐怖心で体が震えたり、生理的に異変をきたしたりした経験はありませんか。そこまで、ひどくはないけれど、「ぞぉ」とした事くらいはあるのではないでしょうか。もし、「ない!」と言う人がいるとすれば、その人は「鈍感」です。
私は、怖がりでない人は、強くなれないと、思っています。言い方を変えれば、鈍感な人は、強くなれないという事です。
何事に対しても、敏感な人程、物事を達成しやすいと思っています。
空手を習得する上で、一番大切なものは、と聞かれたら、即、怖がること。と答えます。なぜなら、怖さを感じなければ、防御できないからです。防御する必要性を感じなければ、相手の攻撃を受けたり、捌いたり、いなしたりする必要性を感じないからです。
ただ、いつまでも怖がっていたのでは、強くなれません。怖さを感じる感受性があった上で、その感情を制御できる練習をするのです。
何事に対してもと書きましたが、敏感と言うのは、問題意識ができるという事です。問題意識がないと、解決策は浮かびようがありません。どんな事にでも、敏感になりましょう。その上で、「鈍感力」が必要になってきます。初めから鈍感な人に「鈍感力」は無用です。
【火之巻】の構成
16. まぶるゝと云事
17. かどにさはると云事 18. うろめかすと云事
19. 三つの聲と云事
20. まぎると云事
21. ひしぐと云事
22. 山海の變りと云事
23. 底をぬくと云事
24. あらたになると云事
25. 鼠頭午首と云事
26. 将卒をしると云事
27. 束をはなすと云事
28. いはをの身と云事
29. 火之巻 後書
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15. おびやかすと云事
おびえると言うのは、色々な場合にある。思いもよらない事におびえる心である。合戦においても、敵を脅かす事は重要である。
あるいは、ものの声で脅かし、あるいは、小さいものを大きくして脅かしたり、又、片脇よりふっと脅かす事。これ怯える事である。その怯える拍子を見て、その利を活かして勝つ事。一対一の戦いでも、身をもって脅かし、太刀を以て脅かし、声を以て脅かし、敵が思わない時に、ふっと仕掛けて、怯える時を活かして勝ちに繋げる事が肝要である。よく研究すること。
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『私見』
人間ですから、ちょっとした事に驚いたり、落胆したり、喜んだり、喜怒哀楽と言うのは、生まれながらに持つ感情だと思います。
しかし、修行と言うのは、そういう煩悩を一つでも克服していく事ではないでしょうか。
「五輪書」を読んでいて、少し、私の考えとは違うと感じる事があります。それは、対峙する相手に対して、かなり低いレベルの戦術に、相手が乗って来るように書かれてある事です。
確かに、感情の赴くままに、揉め事になるような人の場合には、通用すると思います。しかし、修行を積んだ人と戦う場合は、もっと命を懸けても良い理由が存在するものだと思っています。
そんな、覚悟も技術もある人が、そう簡単な事で怯えたり、狼狽えたりするものでしょうか。私は、そうは思いません。
自分自身も相手の、脅しや挑発に乗る事は、まず、ないと思います。もちろん、未来は未定ですが、少なくとも、25歳を過ぎてから、今日に至るまで、そう言う事に、心を動かした記憶はありません。
言い訳をするようですが、あくまでも戦いの場、もしくは交渉事、あるいは揉め事に対しての事です。普段は、普通に驚きますし、怖がったりします。ドラマを見て涙ぐむこともありますし、大笑いする事もあります。これは、覚悟を決めた時の事を言っています。
またもや、武蔵の教えを否定してしまいましたが、 うつらかすと云事でも、最後に書き添えましたが、私が言っているのは、あくまでも、一対一の戦いの場合を想定しての事です。
多人数の場合は、武蔵の「多敵」の場合とは違いますが、「うつらかす」と言った、伝染する事は体験上あると言えます。一人に対して勝つ事で、他の人の戦意を喪失させてしまう事もあるのです。
これは、結果的には、相手を「脅かす」事になったのだと思います。合戦のように騒がしい状態では、想像しにくいですが、静かな時に、地響きするくらいの大声で気合を掛けると、相手が委縮してしまう事も体験しました。
一度だけ、道場で大声を出して注意をしたら、気絶した子がいました。後で知ったのですが、その子は、後ろめたい気持ちがあったそうです。こちらの方がびっくりしました。
特に大人の人は、慣れるまでは、私の号令をかける声に「ビクッ」となっているのを見る事がよくありました。
ですから、「おびやかすと云事」に効果が無いと言っているのではありません。対峙する相手を見定める、眼力がなんとしても必要になります。
【参考文献】
・神子 侃(1963-1977) 『五輪書』徳間書店.
・佐藤正英(2009-2011) 『五輪書』ちくま学芸文庫.
【参考サイト】
・播磨武蔵研究会の宮本武蔵研究プロジェクト・サイト「宮本武蔵」http://www.geocities.jp/themusasi2g/gorin/g00.html
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